皆様こんにちは。本日は皆様とお話しできる場を頂き、光栄に思います。ありがとうございます。

 航空自衛隊とアメリカ空軍にはたくさんの共通点があります。エアメンとして自国民や自国領土をはじめ自由に対する価値観、民主主義、平等などを守る責任を負っています。その任務は今も変わりませんが、世界の状況も直面する潜在的脅威も大きく変わりました。それが今日の現実です。

 個別に、またパートナーとして航空自衛隊も空軍も重要な岐路に立っています。今日の我々の決断と行動が間違いなく、日本と周辺地域、ひいては世界の安全と安定をもたらす将来の能力の原動力となります。今我々が下す決断と行動は、両者の能力と相互運用性を強化することに焦点を当てなければなりません。そして、我々は前途有望な歴史的な始まりに着手しました。

 ご存知のように、日米両政府は安全保障同盟を変革することをお互いに約束しました。目指すのは、この安全保障のパートナーシップが、これまでと同様に 50年先の将来においても効果的であり続けることです。まず共通の戦略目標を確認する作業から始めました。これを基に日本に駐留する米軍を再編成するための、そしてより重要である双方の役割、任務、能力の検討と強化のための大規模な枠組みを作成しました。

 変革と再編のための主要な運用上の変更の中でも、空軍と航空自衛隊の相互運用性を強化する取り組みほど大きなものはないということを皆様にきちんとお伝えしたいと思います。 これから述べる事例を考えてみてください。

 先ほど、キーンエッジ共同演習を実施しましたが、日米のエアメンによってもたらされた力は見事な事例となりました。彼らは実際に顔を合わせながらリアルタイムで情報を共有し、しっかりとした共通運用図 Common Operating Picture を作成し、人道支援活動から紛争にいたる各種シナリオへの対応を調整しました。航空自衛隊と空軍の運用上の、そして技術的な通信リンクはもちろん優れたものではありますが、成功の根本的要素は人にあります。横田基地にあるBJOCCと呼ばれる暫定的な共同統合運用調整センターにおいて、またACCEと呼ばれる航空調整所において、そして市ヶ谷にある共同調整所において、生身の人間が日米間の調整と協力を一段上の効果的なレベルに押し上げたのです。このレベルにおける協調関係が、金正日のような潜在的な敵の注意を喚起し、世界の危険地帯において彼らに節度を持たせています。

 そして、この日米関係は指揮所や司令部だけでなく、現場においても活用されています。3月には初の訓練移転を実施しました。大変見事でした。築城基地において嘉手納基地のF-15と航空自衛隊のF-2が訓練しました。この経験はパイロットだけでなく、訓練に関わったすべてのエアメンにとって有意義なものとなりました。ロジ担当者は基地の施設と支援状況を調べ、整備関係者は飛行を確実にし、フライトライン上でお互いにさまざまなことを学び取りました。地元自治体の関係者がアメリカのエアメンと会う機会もあり、アメリカの軍人と会うのが初めての方もいらっしゃいました。すべてのレベルにおいて築かれた友情は、まさに形を変えたソフト・コンバット・パワーです。

 これらの事例は、我々がこれまで行ってきた共同訓練、たとえば航空自衛隊のイラクでの任務のためにアメリカの C-130のクルーが日本のクルーと訓練することや、コープサンダーやコープノースのような大規模な訓練、また三沢、嘉手納、横田の各基地で実施している部隊規模での訓練や交流プログラムなどの一環であるに過ぎません。

 共に戦闘即応態勢を維持しながら、米空軍は運用上のプレゼンスの向上を図っています。嘉手納の第 18航空団は、F-15Cを最新のモデルにアップグレードし、新しいエンジンやレーダー、Joint Helmet Mounted Cueingシステム、すなわちヘルメットによる追尾システムを装備しました。横田の第374空輸航空団では、より良いパフォーマンスを得るために輸送機をC-130EからC-130Hに変えました。また、沖縄ではF-22ラプターによる初の海外展開を成功裏に収めつつあります。

 共同演習や共同訓練に加え、航空総隊司令部が府中基地から横田基地に移転した際には、日米で隣り合って仕事をする環境が整います。この、まさに変革といえるイニシアチブは、司令部と人員の移転のみならず、航空自衛隊と空軍のスタッフが弾道ミサイル防衛と日本の防空のために共に仕事をするための BAOCC共同航空作戦調整センターの建設も含まれています。この取り組みは2010年の運用開始を目標としていますが、これにより横田基地の景観が変わるだけでなく、両空軍の相互運用性の変革と強化をもたらします。

 弾道ミサイル防衛は、アメリカにとっても重要でありますが、日本にとっては切実であります。去年の夏の北朝鮮によるミサイル発射事案が示したように、ミサイルの飛行時間は短いです。非常に短いです。イージスや SM-3などのミサイル防衛能力に関する日米共同の研究、開発、実験、配備などは、世界でも例のないものです。この総体的に強化された防衛運用能力と相互運用性の最終的な成果は、信頼し得る抑止力です。大多数の人が納得すると思いますが、弾道ミサイル防衛の最良の形は、発射台からミサイルが発射されないことを保証する抑止力です。

 この取り組みを支援するため、太平洋空軍では今年の 1月、横田基地に第13空軍の分遣隊を前方展開しました。第13空軍の第1分遣隊は24時間態勢でハワイの太平洋航空宇宙作戦センターとリンクしています。50名の分遣隊スタッフの仕事は、日本における航空作戦とその計画、調整を第613航空宇宙作戦センターと行うことです。簡潔に言いますと、米空軍のAOCが日本の防衛により完全に寄与するということです。それと同等に重要なのが、この再編において第5空軍をこれまで通り日本に置き、航空自衛隊と日々の調整を継続していることです。

 米空軍に関して言いますと、老朽化してきている航空機を近代化しなくてはなりません。現在のグローバル・リーチとグローバル・パワーを維持しながら、新たな難問に対処し打破できるよう準備しておかなければなりません。新しいタンカーや研究用、レスキュー用の航空機、更には機能の充実を図った ISR(情報、監視、偵察)能力が必要です。いつでもどこでも飛行し、戦い、勝つための第5世代の戦闘機の能力が必要です。このほかに、エアメンへの投資も続けていかなくてはなりません。

 日本も似たような重要な岐路にあると思います。先週の 2プラス2で出された共同発表では、今日の日米による同盟への投資が明日の平和と安全を保障すると明示されています。共通戦略目標を明確に定義することができました。今回の2プラス2では朝鮮半島の非核化と、中国の軍事活動の透明性を向上させ、当地域の信頼できるパートナーとなっていけるよう努力していくことなどの目標の重要性を強調しました。両政府から示された、軍事同盟と協調関係、相互運用性を強化していく方向性を実施しながら、政治的目標を達成して行きます。

 相互運用性について少々述べたいと思います。軍事的意味で使用される相互運用性は、ほとんどの場合装備を指しています。もちろん装備の相互運用性はきわめて重要です。しかしながら、日米間の信頼と理解友情が時によっては最も重要であることを、これまでの日本勤務の経験から学びました。個人的な関係はコンバットパワーと同じだけの力があります。 2プラス2の共同文書でも、危機的状況下で自衛隊と米軍が共に活動できるよう準備を整えていくよう示されていました。そしてJAAGAはこの手助けをして下さっています。日米間の個人的、そして仕事上の人間関系を育んできたこれまでのJAAGAの活動に感謝いたします。 皆様のご静聴とこのようにお話し申し上げる栄誉を頂き、ありがとうございました。


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JAAGA講演会(2007・5・9)

「空自と米空軍の相互運用性の強化」
在日米軍司令官 ライト空軍中将