航空自衛隊創立50 周年を記念して、津曲航空幕僚長以下現役自衛官約100 名並びに歴代空幕長をはじめ空自約200名の参加のもと、6月28日グランドヒル市ヶ谷において記念講演会が開催されました。引き続く懇親会は、講演会出 席者に加えてワスコー第 5空軍司令官以下の米軍関係者及び内外から100名を超える参加者があり、華やいだ雰囲気の中で50周年の節目に相応しい極めて盛大な記念行事となった。

 講演会は、航空自衛隊の大先輩である元統合幕僚会議議長の竹田五郎氏による「航空自衛隊創設期の回顧」 、元国連代表部大使の佐藤行雄氏による「活動が国際化する自衛隊に求められるもの」の二つのテーマで講演が行われ、興味深い内容に参加者は大きな感銘を覚 えた様であった。

 先ず第1テーマにおいて竹田氏は、防衛力整備計画の歴史的経緯や部隊建設計画の実績、並びに防空任務の米空軍からの移管状況等から空自創設期を昭和 29年から35年位までとし、創設期ならでは各種の事情と体験から創設期を分析した具体的な回想談であり、 F-86F時代の話題に受講者を引き込んでいった。中でも、装備や組織が不十分な環境で墜落事故が相次いだ厳しい状況下にあっても、パイロットを中心とし て飛行訓練に邁進し、「勇猛邁進」の気風が空自全体に広がり、根付いていったことが事例を通じて紹介され、当時を良く知らない受講者、とりわけ現役自衛官 に感動の輪が広がった。また自衛隊に対する厳しい世論の中でも「日の丸ジェット戦闘機」への国民的愛着があり、浜松から羽田までのF-86Fによる飛行時 間を問うキャンペーンが催されたことや、今を時めく「ブルー・インパルス」が上級司令部の命令によって編成されたのではなく、熟練パイロット達の自主的な 活動で立ち上げられたことなどの“秘話(?)”に話が及んだ。最後に竹田氏は、航空自衛隊が 50周年を迎えた今、組織や体制が堅固になった分、逆に隊員の夢が膨らみ難くなっているのではないかという先輩としての所感を述べるとともに、「今までの 50年を踏まえ、組織として、個人として新たな目標を定め、積極果敢に前進してもらいたい。」と講演を締めくくった。

 続く第2テーマで佐藤氏は「同い年」である防大5期生との私的な交流や、Mig-25事案当時の外務省アメリカ局安全保障課長等として防衛庁との長期の 職務上の繋がり等を背景に、国連と自衛隊との関係等について幅広い観点から論を展開された。 先ず国連代表部への防衛駐在官派遣や国連本部(PKO局等)への自衛官派遣等について、佐藤氏自らがインシアティブをとり、また防衛庁長官や幕僚長等によ る国連要人訪問を実現してきた経緯を具体的に紹介し、受講者の多くは「目からウロコ」の感想をもったようだ。

・イラクにおける多国籍軍参加問題については、佐藤氏の現役外交官時代、「なぜ日本は国際社会を日本の国内事情に適合させようとするのか?」という厳しい 質問に幾度か遭遇した事例を引用しつつ、「仮に近い将来自衛隊がイラクから撤退するようなことになれば、自衛隊の国際的評価は直ちに崩壊することにな る。」との持論を強調した。
・わが国は今日、北朝鮮とイラクという二つの事態に直面しているが、これらの対応は冷戦が終結した状態にある欧州諸国等と種々の面で事情が異なることを考 慮し、その上で集団的自衛権や憲法の解釈 改正を考えるべきと指摘した。
・PKO等の国連の平和活動を考えると、これらの活動又は国連自体が依然として進化の過程にあり、この中で日本の役割を考えていくことが必要である。また 自衛隊の任務も多様化しているが、日米防衛協力がわが国の対米発言力を強めているとも述べた。
・国連創設60周年であるの2005年、そして日本の国連加盟50周年の2006年は、わが国が非常任理事国として安全保障理事会に9回目の席に着く予定 であり、今後、日本の活躍の場は益々広範となるとともに加盟国の日本への期待も大きくなることが考えられる。同様に近い将来には自衛隊の国際的役割も益々 大きなものになるとの見通しと期待を表明して講演を締め括った。

講演会は300名を超える参会者で、一つの講演会場のみでは収容しきれず、三つの別室にモニターを設置しなければならない程の盛況であった。講演会後、講 演会参加者と懇親会のみの参加者は大宴会場に移動した。  冒頭、津曲航空幕僚長から記念講演の内容を引用しつつ、空自を象徴する新しい標語として「勇猛邁進・クリエイティブ」が紹介され、また鈴木・新生つばさ 会会長からは「新生つばさ会活動を氷山の海面下に例えた空自支援組織」とする力強い挨拶があり、次いでワスコー司令官から空自に対する賛辞等が述べられた。各スピーチが終る毎、数百名の拍手が会場に響い た。村木 日米エアフォース友好協会会長の乾杯の音頭によって始まったパーティは、一般招待客や米軍招待客そして現役自衛官、空自OB等による懇談の輪の広がりの 中、賑々しく華やかに繰り広げられた。  (吉田理事記)

 

航空自衛隊創設50周年記念講演・懇親会