ご紹介ありがとうございます。本日は日米両国のすばらしい軍関係者や民間の方々と対話できますことをうれしく思います。私にとって非常に身近であり、大事に思っている本日のテーマに対し、皆さまも興味をお持ちくださり敬意を表します。また、在日米軍を代表し、安全保障同盟及び制服を着ているものたちへの変わらぬご支援に感謝いたします。
 本日の集まりほど、その支援が明確であるところはありません。 USジャパンリンクは我々両国が安全保障同盟を維持し、強化していく上で貴重な支援をしてくださっています。その目的は相互理解や相互協力、また両国民のお互いへの尊敬の向上であります。その活動の中で最も顕著なものが、ウェルカムマリンプログラムであります。これは年に一回、日本企業や官公庁、また日本の一般家庭に受け入れていただくことで、若いアメリカ軍人に日本体験の場を与えてくださる活動です。ホストファミリーの皆さんは、参加者をご自宅に受け入れ、暖かい心、友情とホスピタリティーでもてなしてくださいます。このような交流から、一生にわたる友情が生まれます。参加者にとっては一生に一回のすばらしい経験であり、この意義深くユニークな活動を支援してくださる皆様に大変感謝しております。このほかにもUSジャパンリンクでは、友好関係を深め、両国民の間の対話の質を向上させ、両国の安全保障への興味を深めるための様々な活動をしています。その一例が本日の集まりであり、私も参加させていただく機会を得、感謝いたします。

 広告界で言うところの「スポンサーからの一言」はこれくらいにしまして、本題に入りたいと思います。約 30分、日米安全保障同盟の重要性について話をさせていただき、その後で皆さまからの質問にお答えします。一方通行のプレゼンテーションよりは、対話ができる「ギブアンドテイク」セッションになるように期待しています。私の考えを皆様に披露し、皆様のお考えも是非聞かせていただきたいと願っています。これまでの経験から、良い質問−これはフランクで熟考を促すという意味ですが−がある時には、一方通行のプレゼンテーションで私が皆様に与えることができる内容よりもはるかに沢山のことを私も学ぶことができ、結果的には両者にとって有益となります。そのようなことから、皆さまからの質問は歓迎いたしますし、そのための時間もあります。また、私は居眠りが一種の批判であると信じています。皆さまが起きていられる様な安全保障同盟に関する課題についてお話をすることが私の目標であります。また、皆様からの質問を通してこれらの課題を深く掘り下げていきたいと思います。 討議に値すると私が信じる最初のトピックは、「不変の強化」と私が呼んでいる安保同盟の維持と強化であります。

 討議に値すると私が信じる最初のトピックは「不変の強化」と私が呼んでいる安保同盟の維持と強化であります。在日米軍司令官として、両政府の最も高いレベルから、日米の陸、海、空、海兵隊員に至るレベルまで安保同盟が毎日実行されている様を見ることができ、幸運であります。両国はこの同盟を非常に誇りに思っています。 駐日大使のハワード・ベーカー氏は、日米同盟を最も重要な二国間関係と呼んでいます。近年この同盟は二国間においても、世界的に見ても、冷戦後の現在我々の直面する課題にとってより重要な意味においても、強く、また有効力を持つものに成長したと私は信じます。我々は日米安保同盟をアジア太平洋地域の平和と安定の礎と捉えています。 50年以上に亘る日米の緊密な関係は、世界で最も重要な地域の一つのこの地域の平和と繁栄、安定をもたらしました。更なる50年、またそれ以降も日米同盟の明るい展望に自信を持ち期待しています。不変の強化には自己満足に対する防御も含まれます。今日現在、非常に優秀であっても向上する余地は常にあることを忘れてはなりません。

 未来に目を転じますと、我々の未来は明るいものであると信じます。同盟強化のために双方の役割や任務についての戦略的対話の継続、地政学の環境を反映する二国間の計画策定や訓練の継続、防衛システムの近代化と整合性への努力、更には平和で力強いアジアのために他の友好国とともによりよいパートナー、また同盟国として努力を惜しまないことなどの活動から見ても未来は明るいものであります。

 次のトピックは、現在行われている両国の防衛構造の変革についてであります。 日本の考え方やその活動から、地域における戦略的役割が目に見えて変化していることを現在経験していると思います。この数ヶ月、自衛隊が人道復興支援のためイラクに派遣されました。イラクにおける他の有志連合軍同様、勇敢な自衛隊員は問題を抱える彼の地に安定と平和をもたらし始めています。有志連合軍は残虐な独裁者からイラクを解放し、現在はフセイン政権が国に与えた害悪から立ち直るために入念に平和的にその実力を存分に発揮しています。

 イラクにおける自衛隊の存在は、日本がその国際的な影響力を使い、世界が今日直面している難問解決に役立ちたいという姿勢を雄弁に物語っています。これは日本にとって歴史的なステップであり、イラク国民も日本政府の支援を大変感謝していると言ってもいいと思います。イラクにおける支援を見ますと、日米同盟はアジア太平洋地域の平和と安全のためだけではなく、全世界における平和と安全の要でもあります。日本とアメリカは共通の課題を抱え、共通の価値観を持ち、共通の利益を共有しています。例えば安全保障の枠組みについて見てみますと、日本への攻撃はアメリカへの攻撃ととらえると、アメリカは言っています。わが政府の最も高いレベルにおけるその発言は、両国のお互いに対する最も明確なコミットメントの表れであります。

 また両国の首脳に目を転じれば、ブッシュ大統領と小泉首相の緊密な絆がわかるでしょう。二人の友情が、共通の問題に取り組み、共通の解決策を見出す大きな要素となっています。そして小泉首相の強力なリーダーシップが、最近の安全保障関係の発展や強化の原動力となっています。日本の各方面のリーダーや決定権を持つ方々および国民の皆さまと我々との暖かく友好的な協調関係の代表的なものが、大統領と首相の関係であります。 例を挙げますと、統合幕僚会議の石川議長と私は 2月にキーンエッジ演習を行いました。日米合わせて約2,500名の人員が参加したこの演習では、机上のシナリオとコンピューターによるシミュレーションを使って、この地域に危機が起こった際にどのような対処が必要なのかを訓練しました。日本周辺事態の認定を想定し、それにまつわる様々な課題と問題に日本の演習参加者とともに取り組みましたが、多数の参加者にとっては初めての経験でした。日本周辺事態の認定は日本の周辺地域に、同盟関係にある日米両国の対処が必要とされる事態が起こった際に、その紛争を平和的に解決するために両国が共に取り組み、相互支援を提供するという概念に基づいています。演習はすばらしい成果を挙げ、様々な教訓を学びました。現在は自衛隊のカウンターパートと共にこれからの取り組みや相互支援の向上に努めています。

 このほかにも日米両サイドで安全保障関係を発展させ強化するための活動があります。皆さまはもちろんご存知でしょうが、現在日本の国会では有事法制に関する七つの法案の審議が進んでいます。この中には国民を保護する法案や在日米軍の作戦運用を支援するものがあります。小泉首相は閣僚の方々に対して、これらの法案の成立は緊急の課題であると強調し、我々も今国会での成立を望んでると伝えられています。 別の法案では、危機的状況の際に自衛隊と米軍が港湾や空港、道路、電波などを優先的に使用できるようになります。有事関連7法案に加えて両政府の代表が新しいACSA(日米物品役務相互提供協定)に署名しました。これにより有事の際に自衛隊とアメリカ軍が更なる緊密な活動関係を構築できます。 このトピックについてもう一つの良い変化は、現在行われている日本、また世界における米軍配置の見直しに対処しなければならないことであります。この件については憶測も含めた報道がされているので、皆さまも米軍全体の見直しが進んでいることはご存知のことと思います。

 このプロセスを進めるにあたって、日本においては二つの重要な要素があります。一つは、何をするにしても安保関係と軍事能力を向上し強化していくことです。また、沖縄県民の負担を軽減する方策を見つけなくてはなりません。このことは、任務の遂行と軍の配置の再考にあたっては、技術的及び能力の向上、任務の合理性を考慮に入れつつ、現在の状況を維持する重要性を理解する両政府の共通の目的であります。また、再編案等については日本政府との緊密な協議が必要であり、今後も続けて行きます。現在東京でその協議が実際に行われているところであります。  また、この件以外につきましても、両国は引き続き協議して参ります。両政府が緊密に取り組んできたことの一つが、冷戦後の世界の脅威を見極めることであります。例として、ほとんどの人は北朝鮮の脅威は重大であると認識しているでしょう。日本にとっては直接の脅威であり、核武装した北朝鮮の脅威は全世界が懸念すべき事であります。皆さまも報道を通してご存知でしょうが、今年の9月からアメリカ海軍は日本海にイージス戦闘システム搭載の駆逐艦を配備します。これは北朝鮮を含む他国からの攻撃に対するミサイル防衛ネットワークを構築する共同作業の一部であります。この地域における戦域弾道ミサイル防衛能力の向上に期待しています。

 また、両国は外交面での活動も継続して行っていきます。北朝鮮の非核化のための第2回6カ国協議が2月に北京で開催され、進展がありました。アメリカの目標である、プルトニウムと濃縮ウランの核計画を含む「検証可能かつ後戻りできない完全な核放棄」は北朝鮮以外の参加国が受けいれました。協議が日米の相互利益にとって進展していることをうれしく思います。来月には各国の高官が北京で作業部会を開催し、6カ国協議をどのように推進していくのかの協議を行う予定であります。6カ国協議は北朝鮮の核問題を超越し、北東アジア地域の安全保障フォーラムに発展する可能性を信じている方々も大勢います。それでも、やらなければならない仕事は山積みであります。

 日米両国にとってもう一つの重要案件は、テロとの戦いを支援し続けていく必要性であります。日本はこれまで、この戦いで重要な役割を果たし、これからも果たし続けていくでしょう。アメリカは日本の貢献に大変感謝しています。イラクにおいて自衛隊は人道的役割そして公な立場での役割を担っております。日本は他にも重要な支援をして下さっています。インド洋での燃料補給やテロ掃討とテロへの資金の凍結などです。これらの支援は重要であり、アメリカは感謝していますが、その支援の本質を見失ってはいけません。テロとの戦いへの、日本の貢献はアメリカとの友情や同盟関係によるものではありません。世界が直面するテロとの戦いに日本が参加したのは、それが最も国益に適っているからであります。

 イラク復興を支援する日本のコミットメントもまた特筆すべきことであります。戦後の復興は軍民の密接な協力関係が必要であるということを、これまでの紛争の経験から学びました。復興への進展は当然のことながら安全をもたらします。そして、安全な環境を供与することが、民主主義による政治的プロセスを進めるカギとなり、それこそが我々が望んでいるものであります。同様に、日米両国が相互安全保障協定の恩恵を受けていますが、それは友情や同盟国であるからといったことが基本となっているわけではありません。この安保のパートナーシップは日本とアメリカにとって最も有益だから存在しているのです。この安保のパートナーシップは、東アジアの安定において強固な基礎の役割を担っており、また世界の平和と安全のための共同の取り組みの基本となっています。

 あまりはっきりと言われることはないですが、共有する強さや繁栄及び価値観の信条を基本とした明確なビジョンをアメリカと日本が共有していると、私は思います。両国は民主主義や開放された競争市場、人権へのコミットメント等の重要性と、世界平和と繁栄への関心で結ばれています。日本とアメリカは自然な形での同盟国であり、今述べたような価値観を共有しているからこそいい友人となれました。両国間には更なる協力関係のみを予測できます。我々の時代の問題や課題には、協力と調整が必要です。世界の繁栄と安定のために一緒に取り組み続けます。日本が世界規模でのリーダーシップを発揮する選択をする場合、アメリカ以外に不動のパートナーはいません。

 最後に私が皆さまに伝えたいのは、私が共に仕事をし、ともに生活をしている自国を防衛すると誓った両国の男女に対し、適切なレベルの継続的な支援の必要性であります。米軍も自衛隊も高い評価を得ています。日本の自衛隊は平和のためによく訓練され、装備され、指導されていると世界で知られています。共に働く米軍人からは高い敬意を得ています。また、彼らには裕福な国、誇りとする伝統と約束された未来があります。相互的協力、任務、指揮系統を通して共同統合訓練や相互運用性の向上のために今後も共に取り組んでいきますが、これからも緊密な協調関係を期待しています。 これらの活動が、日本の防衛や当地域に起こりうる不安定な緊張を事前に緩和する効果を発揮します。国際的な平和活動や災害対応への参加を増加できます。共に仕事をするにつれ、お互いの能力への理解や相互信頼が深まり、更によき友人となり得ます。必要な時と場所で変化を起こして行けます。

 最近の出来事からわかるように、現在世界では様々なことが起こっています。また我々が住むアジア太平洋地域は難しい地域であります。今日不安定要素はたくさんありますし、将来もそれが変わらないことは疑いないでしょう。しかし、その不安定要素が私たちを活動に駆り出すのを待っているわけには行きません。世界とわが同盟が直面する現実に焦点を当て続けなくてはなりません。そしてこの現実には、力強く活力にあふれた日米安全保障同盟と自衛隊員、米軍人の誇りとプロ意識が含まれます。数週間後、数ヵ月後、数年後とまだまだやらなければならないことが山積みであります。しかし、我々の緊密な協力関係を持ってすれば、更に強力で友好的な同盟関係の構築ができると強い自信を持っています。 ご静聴ありがとうございました。皆さまからの質問をお受けします。  どうもありがとうございました。

US-JAPAN LINK講演会
2004年4月27日