在日米軍副司令官ティモシー R.ラーセン准将は、平成15年9月9日(火)東京赤坂の東京財団(日下公人会長)の「虎ノ門道場」において350名超の一般大衆に「日米安全保障関係」と題する講演を行った。この講演は、日米関係の現状や展望に関する一般の人々のより良い理解のため、当協会事務局が企画推進する講演会や懇談会等の一環として実現したものです。ラーセン准将は、在沖縄米海兵隊基地司令官から着任早々にも拘わらず、沖縄を主に4回の在日勤務で培われた物腰の柔らかさと、時折海兵隊員としての精悍な表情を織り交ぜながら、この地域に於ける米軍のプレゼンスの意義、イラク問題、北朝鮮問題等について質疑を含め約1時間半の講演を精力的に実施した。

 以下その要旨。米国のプレゼンスの規模については、現在は5.8万の軍人、0.5万の米軍属、2.5万の軍関係労働者、5.2万の家族であり、総計14万人に達している。このプレゼンスは、過去半世紀に亘って対ソ連を狙いとした60年代から、最近の対北朝鮮の動きに至るまで、紛れもなくこの地域の安定と世界の安定に貢献して来ており、テロ問題等の不確実な今後の課題にも取り組み続けるであろう。イラク問題については、連合軍に対する日本のいち早い支持は、日本が頼りがいのあるところを証明してくれたものであり、米国は大変感謝している。圧政者からイラク国民を解放するという、イラク戦の正しさを認めて支持してくれたものと信じている。さらに、日本が財政支援を約束してくれたことも併せて歓迎されている。イラクではこれから大変な作業が残っている。日本に米国が何かを期待するということでなく、日本は日本の国益に基づき判断して行動してもらいたい。今後、国連の専門機関やNGOの支援も期待している。戦後復興は、軍人と文民の双方の協力が必要である。北朝鮮問題については、6か国協議が終わったばかりであり、外交努力の最中であるので軍事的オプションについては言及できない。軍は外交努力を100%支持している。北の核は、極めて大きな脅威である。米国は、北が不可逆的な方法で核を放棄すれば、今までと異なる支援の用意があり、新たな関係確立の用意がある。質疑においては、日本は核武装すべきか? 米国は憲法9条の改正を希望するか? 在韓国の第2師団が後方に引く場合、日本に来るオプションはあるか? 北朝鮮との不可侵条約締結の影響は? 沖縄集中米軍の本土分散の可能性は? 日米の共同運用の将来は? 等々活発な質問が行われた。最後に、今後の日米安全保障関係についての私見として、この2年で世界は変わった。劇的変化の時代、予測不能の時代、新しくかつ、予測できない脅威の時代である。従って、今後は、あらゆる分野に対応できる、柔軟性ある日米同盟関係に進化しなければならないと思うと述べ講演を締めくくった。(中司理事記)

          

在日米軍副司令官、虎ノ門道場で講演