平成27年度JAAGA総会が5月12日(火)、グランドヒル市ヶ谷 において、講演会、懇親会とともに開催された。あいにく台風6号が転じた温帯低気圧が関東地方に接近中とあって、懇親会終了時には風雨が強まってきていたが、一連の行事は整斉と実施された。

【総会】
 年次総会が15時から16時15分までの間開催された。審議に先立ち、昨年度ご逝去された故石坂公之助氏、故川口豊氏、故美濃谷一義氏の御冥福を祈り、全員で黙祷を捧げた。引き続き、外薗健一朗会長から、「会長就任後1年経ち、会員のサポート、理事の積極的な業務推進の姿を目の当たりにし、心強く思い感謝している。新たな理事、会員を迎え、ますますJAAGAの活動が活発になることを希望する。2週間前、安倍総理が渡米しオバマ大統領と会談し、日米同盟がますます堅固になるとのモチベーションが上がった。JAAGAはボランティアのサービスとして、航空自衛隊と米空軍との間の友好・協力関係がますます促進されるよう、側面からしっかり支援していきたい。6つの議案の審議への協力をお願いする」との挨拶があった。
 正会員総数243名の内、出席者63名、委任状提出者151名の計214名をもって会則の規定により総会が成立した旨、進行担当の福井理事から説明があり、議案審議、報告事項、新旧役員等の紹介の順に審議等が進められた。
 議案審議は、第1号議案(26年度事業報告)、第2号議案(26年度決算報告)、第3号議案(27年度事業計画(案))、第4号議案(27年度予算(案))、第5号議案(会則の一部改正(案))、第6号議案(副会長・監事の選任(案))の6つの議案について担当理事による説明があった後、議案によっては質疑応答を通して突っ込んだ意見交換が行われた。その結果、何れの議案も提案通り承認された。特に、年度事業に係る議案では、各種研修や会勢拡張のあり方が話題となった。また、会則については、名誉会員の対象が、従来の米第5空軍司令官経験者に加えて、米太平洋空軍司令官経験者も含むよう、一部改正が承認された。新副会長・監事の選任を経て全ての議案の審議が終了した後、報告事項として、役員会で選任された新理事、支部役員等が報告された。最後に、新役員等及び退任者並びに理事の所掌分担が紹介され、外薗会長からの期待と感謝の言葉に続いて出席会員全員から温かい拍手が送られ、定刻をもって総会議事を終了した。

【講演会】
 
嘉手納基地の第18航空団司令コーニッシュ准将(Brig. Gen. Barry R. Cornish)による講演が、16時半から18時までの間、「相互安全保障と繁栄への貢献(Dedication to Mutual Security and Prosperity)」の演題で実施された。
 講師とMissy夫人が拍手に迎えられて入場し、進行担当の彌田理事から講師の経歴として、本年4月2日に米太平洋空軍司令部司令官付補佐官から嘉手納基地の現職に着任した旨、及び25年間の軍歴をF-15戦闘機操縦士としての任務や戦闘機搭載武器等の開発に従事し、戦略情報、国防産業、資源管理、経済にも造詣が深く、幅広い視野と多くの視点から安全保障に貢献し、5空軍や太平洋空軍から信頼が厚い旨、並びにネリス空軍基地に2回勤務し、嘉手納基地勤務も今回で2回目である旨が紹介された。日英の逐次通訳は、米第5空軍司令官兼在日米軍司令官の特別補佐官であるコールマン女史(Ms. Janette Coleman)が的確に務めた。
 講話は、〈THE HISTORY OF OUR ALLIANCE(日米同盟の歴史)〉、〈WHAT THIS ALLIANCE ENABLES US TO DO(日米同盟が可能にするもの)〉、〈KADENA’S ROLE IN THE FIGHT(嘉手納基地の役割)〉、〈OUR HUMANITARIAN FOOTPRINT(人道分野の足跡)〉、〈REGIONAL THREATS TO PEACE AND STABILITY(地域における平和と安定への脅威)〉、〈ACTIONS TO ENSURE OUR JOINT SUCCESS(共同を成功させるための行動)〉という構成で展開された。全体として、55年を迎えた日米同盟の意義、(嘉手納基地の活動を例示しつつ)航空力及び沖縄の戦略的重要性、(アジア太平洋地域の特性を踏まえた上での)地域の平和と安定のための取り組み(具体例として、下士官交流プログラム、TSP(Theater Security Package:戦域安全保障パッケージ)、日米共同訓練の3つを例示)について、強調された内容であった(講話内容は、HPに和文英文を掲載)。
 講話の途中、「第18航空団での勤務は2度目。沖縄は大好きな場所であり米空軍勤務で一番良い場所だと思っている。前回の勤務を終え沖縄を出るとき私は、ある噂を撒いた。それは『いずれ団司令として沖縄に戻ってくる』である。その噂が現実となった。今夜私は、新たな噂を流そうと思う。『いつか5空軍司令官として戻ってくる』という噂を。どうか皆さん一緒に広めてほしい。」と満場の拍手を受けながら、親日感溢れる想いが吐露される一幕もあった。
 約40分間の講話に引き続いて、以下のように活発な質疑応答がなされた。

Q1:東アジアの安全保障について、太平洋空軍勤務時の考え方と、実際に沖縄で勤務しての印象に違いはあるか?
A1:太平洋空軍司令官が戦略的観点で太平洋地域全体を捉えている姿を日々見てきたが、今自分は戦術的レベルの見方に変わってきている。沖縄での空自と米空軍の良好な関係が太平洋地域にとっての平和の基礎となっており、2国間の協調、友好関係が太平洋地域全体に広がっていけば良いと感じている。

Q2:沖縄周辺の国の空軍についてどのように評価しているか。
A2:重要なことは、公海及び上空でどのような国際的な取り決めがあり、それがその国に適用されているのか、それをその空軍が理解しているのか、理解した上で行動しているのか、であると考える。自国領域外での活動には多くの責任が生じる。ICAO、シカゴ条約等をそこで活動している空軍が知っているか否かを知るところから我々は始めなくてはならない。則って活動していない場合は、次にどのような行動に出てくるのか非常に不透明になる。このようなことに細心の注意を払っている。その地域で行動する空軍には、責任のある行動、責任のあるパートナーとしての行動が求められると考える。

Q3:嘉手納の隊員と地元との関係は如何か?
A3:問題は生じていない。抗議活動はあるが殆どがとても平和的に行われている。隊員が地域で交流を持とうとするとき、沖縄の人ほど親切、友好的、もてなし上手で素晴らしい人々は居ないと私は感じている。米軍人、米国人は沖縄が大好きだし、沖縄の方々も米国を好きであり、良い印象を持ってくれていると思う。もちろん普天間移転、沖縄の状況についてレベルによって色んな考えがあるとは思うが、個人的レベルでは、沖縄の方々は米軍関係者に対して尊敬と尊厳を持って日々接してくれている。
Q4:米空軍が従来のプラットフォーム中心からネットワーク中心の空軍に変わって行く中にあって、同盟国と共同作戦をする場合の着意は何か?
A4:ネットワーク中心の空軍には脆弱性が伴う。特にインターオペラビリティーの観点から重要なことは、情報の共有(Security)、技術的な問題(Technological)、文化的な問題(Cultural)である。個人、組織の文化的な違いを超えて協力していくことに焦点を当てることが必要と考える。インターフェースをよりよくすることにエネルギーを注ぐ必要があるが、それによって国益を守っていけるのか、ネットワークを使わないで出来るのか、ネットワークがない環境で国益を守るために何ができるのか、ということも考えなければならないし、我々が直面する大きな問題になって来よう。安全保障面で日米がよりよく協力していくためには、良い関係に加えて、文化的違いを超えていく必要があるのではないかと考えている。

Q5:団司令としての統率方針、指導方針は何か?
A5:私の方針は「Servant Leadership」だ。効果的なリーダーであるためには部下のために尽くすことが必要であり、毎日、自分のために働いてくれる人に何ができるかを考えている。私の下で働く様々な階級の隊員に、誰のために働いているのかと、毎日問いかけている。彼らは力強く誇りを持ちながら「あなたのために働いている」と答えてくれる。しかし、私は、「それは違う。あなたはあなたの後ろにいる人のために働いているのだ」と正す。フォロワーのために働くのが私の哲学だ。リーダーの仕事は、毎日障害を取り除き、部下が仕事をやりやすく任務遂行意欲を高く持てる環境を作っていくことである、と考えている。

Q6:ネットワーク中心の作戦は脆弱性も有するが、攻撃等によって機能が低下した環境(Degraded Environment)下で能力を発揮するために、どのように訓練を行っているか?
A6:ある演習で、全てのシステムが正常な状況から訓練を開始し、サイバー攻撃の状況を付与し組織的にシステムの特定部位の機能を低下させた。サイバー攻撃の興味深いところは、どのように攻撃されているのか、何が使えなくなっているのか、情報がどう操作されているのかがすぐには分からないこと。演習のプレーヤーにはサイバー攻撃を受けているということを伝えた上で、ネットワーク上に出てきているものが全て真実だとは思うな、と伝えるところから始めている。演習の中でシステムを元に戻せる状況もあれば、そのままオペレーションを続けなければならない状況もある。システムが戻らない場合は、そのような中でどのように創意工夫してオペレーションをしっかりやっていくかという演練になる。その方がたぶん現実的環境の中でのオペレーションになると思う。制限がかかる中でのオペレーションになる可能性が実際には高いことを隊員に理解させることが重要ではないかと考えている。Degraded Environmentは実際の戦闘では通常の状況であろうから、それを想定した訓練を様々な場を使って行っている。

 会員からの質問に講師は真摯に応じ、質疑応答セッションは時間ぎりぎりまでの50分間に及んだ。
 最後に外薗会長から、「素晴らしい講話と、それ以上に実り多かった質疑応答に感謝する。あなたの将来に関する『噂』を日本中に広めることを約束する。」とのユーモア溢れる謝辞に続き、「ささやかではあるが心からの贈り物をあなたとご夫人に。」との言葉と共に記念品が渡され、講演会は定刻をもって終了した。

【懇親会】
 
懇親会は18時15分から約1時間半にわたり、会員、招待・案内者、防衛省及び米軍の現役等、200名を超える関係者が集まり実施された。谷井理事の英語による司会進行(スピーチも全て英語)により、冒頭、会場正面に掲揚された日米両国の国旗に正対し、米国、日本の順に国歌が吹奏され、全参加者が両国に敬意を表した。
 引き続き、外薗会長が登壇し、ゆっくりと大きな声で、「Ladi-es!, and, Gen-tlemen!」と会場を一気に和ませ、「ご来場の皆様を始め、JAAGAの会員、友人の皆さんの理解と協力に感謝する。米第5空軍司令官アンジェレラ中将(Lt. Gen. Salvatore A. Angelella)が6月に退役されることを紹介したい。アンジェレラ中将は5度にわたる日本勤務を通して日本をよく理解され、日米同盟を強固にするための多くの顕著な功績を残された。彼とMarci夫人に心から感謝と尊敬の念を表したい。残念ながら本日はこの場には居られないが、三沢で最終フライト中である。会則に則り、彼に名誉会員を要請することとしたい。つばさ会の付属組織としてJAAGAは、航空自衛隊と米空軍の友情と相互理解を促進するための様々な活動を行っていくので、これからも皆さんのご理解とご協力を賜りたい。」と挨拶した後、「この懇親会は可能な限りシンプルな形で開催したいので、私のスピーチが唯一のスピーチ(Only Speech)だ。レセプションを思う存分楽しんでほしい。」と再び会場を沸かせた。
 引き続き、主賓の原田憲治防衛大臣政務官、佐藤正久参議院議員、中谷真一衆議院議員、航空総隊司令官杉山良行空将、米18航空団司令コーニッシュ准将(Brig. Gen. Barry Cornish)夫妻が紹介され、次に、メインテーブルの来賓が時計回りに、航空幕僚副長森本哲生空将、補給本部長吉田浩介空将、技術研究本部技術開発官小城真一空将、航空総隊副司令官前原弘昭空将、幹部学校長小野賀三空将、冨田勝也福生・横田交流クラブ副会長、石塚幸右衛門瑞穂町長、竹河内捷次つばさ会前会長、遠竹郁夫つばさ会会長、吉田正つばさ会副会長、杉本正彦JANAFA会長、米第5空軍A6部長バス大佐(Col. Sam Bass)、航空支援集団司令部西ひとみ2等空曹(26年度JAAGA賞受賞者)、統合幕僚監部運用部長武藤茂樹空将、中部航空方面隊司令官平本正法空将、航空開発実験集団司令官岩成真一空将、情報本部長宮川正空将、航空支援集団司令官福江広明空将と、順次紹介された。この他にも多くの自衛官、米軍人の参加を得ている旨とともに、佐藤正久参議院議員、北部航空方面隊司令官尾上定正空将からの祝電が紹介された。
 そして、谷井理事の「The time you want comes. Please enjoy the rest of time, delicious food, drinking and chatting.」を合図に、一気に場はくだけ和気藹々とした宴が始まった。会場内には新たな出会い、懐かしい再会を含め、随所に懇談の輪が生まれた。今回米軍人には大尉クラスが多く見受けられたが、彼らは一様にJAAGAの存在と活動に親近感を持ち感謝していると語ってくれた。また、同階級の空自の若手幹部と交流を持つことが出来れば、将来に亘って両国にとって有益であろう、との声も聞かれた。
 時間の経つのはあまりにも速く、あっという間に終了時刻が近づいた。織田副会長が「2週間前安倍総理が米議会におけるスピーチで仰った『Alliance of Hope』とは、JAAGAそのものである。」と挨拶した後、「Alliance of Hopeのために乾杯!」との発声により、熱気あふれる懇親会は閉会となった。その後も暫く、温帯低気圧を吹き飛ばすかのような余韻がにぎやかに続いていた。 (木村(和)理事記)

 

平成27年度JAAGA総会開催