平成26年度JAAGA総会が5月13日(火)、グランドヒル市ヶ谷において、講演会、懇親会とともに開催された。

【総会】
 年次総会が15時から1時間余にわたり開催され、正会員総数247名の内、出席者70名、委任状提出者153名により、会則の規定により総会は成立し、審議等が進められた。審議に先立ち、本年春の叙勲においてJAAGA元会長である御二方が叙勲の栄に浴されたことが紹介された(竹河内捷次元会長が瑞宝大綬章、遠竹郁夫元会長が瑞宝重光章)。また、昨年度ご逝去された故後藤龍一氏、故川崎鎮雄氏の御冥福を祈り参集者全員で黙祷を捧げた。
 その後、総会の進行は会長挨拶、議案審議、新会長、副会長及び監事の選任、退任者の紹介、新顧問の委嘱等の順で整斉と実施された。
 吉田正会長からは「JAAGAの活動はますます充実してきており、空自と米空軍との相互理解及び友好親善を推進し、日米両国の信頼関係の向上に貢献するとした設立目的に十分合致した活動が鋭意なされている。19回目にあたる平成26年度総会においても前年度の総括を行い、今年度の事業及び予算等について鋭意御審議願いたい」との挨拶があった。
 続いて、議案審議に移り、平成25年度事業報告、同決算報告及び監査報告並びに平成26年度事業計画及び同予算に関する各々の議案について担当理事から説明があり、いずれも提案通り承認された。その過程でJAAGAの活動に係る各種の案件について意見が交わされた。最終議案として、役員の選任が行われ、会長、副会長、監事、顧問、新任理事等の新年度の役員が紹介された。外薗健一朗新会長より「歴代会長の御功績を引き継ぎ、鋭意JAAGAの活動のさらなる発展に寄与したい」との挨拶がなされた。
 最後に、外薗新会長からJAAGAへの貢献に対する感謝と共に退任する吉田前会長の紹介がなされた。さらに退任する副会長、監事、理事の紹介及び顧問委嘱が行われ参集する全会員から暖かい拍手が送られ総会議事を終了した。

【講演会】
 第5空軍司令官兼在日米軍司令官Lt. Gen. Salvatore A. Angelellaによる講演が16時半から18時までの間、「QDRに基づくアジア太平洋地域における米軍の活動について(U.S.Forces’ Operations in the Asia-Pacific Region Based on the QDR)」の演題で実施された。
 <オバマ大統領訪日と日米同盟>
 冒頭、JAAGAが設立された1996年に第5空軍司令官の副官として日本での最初の勤務した時以来、5度にわたる日本勤務を通じて、JAAGAとの交流を持てた事に感謝が表せられた。
 講演における主なテーマは、2014年3月に出されたQDR(4年毎の国防計画の見直し)の方針に基づく今後の在日米軍の活動であったが、講演を通じて、随所にオバマ大統領訪日の意義と日米同盟の重要性が語られた。司令官が大統領に会うのは初めてであったが、空港の出迎えラインに立った際は北朝鮮のミサイル発射の兆候も懸念される中、その訪日のタイミングはベストであり、「常に日本の自衛隊、特に航空自衛隊と緊密な連携を図っており、問題となるような新たな事項なし」と報告した事が紹介された。
 大統領が日米共同声明において、半世紀を超える強固な日米同盟が北東アジアのみならずアジア地域全体の平和と安定に寄与し、その同盟関係は地域の安全と安定の要であるとの認識を明確に表明した事は極めて意義深いものだと述べた。
 講演が始まると同時に、右サイドのスライドには米空軍の各種活動状況と併せ、ヘーゲル国防長官やオバマ大統領の訪日時の写真が映し出された。司令官の話と相まって、最近の日米間における緊密な交流を具体的な描写として振り返る構成となっており、スライドショー最後の写真は、デンプシー統合参謀本部議長と岩ア統合幕僚長が並び立つ写真であった。司令官はサイドの写真を振り返り、日米同盟におけるミリタリー間の連携を象徴するとの思いを込めつつ「とても、素晴らしい写真ですね」と語った。
 <QDRと国防戦略>
 主なテーマに関する内容としては、全般認識として、2012年に示された国防戦略指針により、経済成長の著しいアジアに軸足を置いたリバランスが推進されようとしているが、多国間との良好な安全保障環境を整え、国家間の緊張を抑止し顕在化させない事が緊要であると述べた。日韓やオーストラリアとの連携はもとよりインド、インドネシア等との間で各種情報の共有を図り、地域の軍事バランスを安定させ、開かれた国際経済環境及び地域の平和と安定に係る共通の認識を進展させる重要性についても言及した。
 その戦略指針を前提に2014年のQDRにおいては、国防戦略の3つの柱として『本土の防衛』『地球規模の安全の構築』『戦力の投射と決定的な勝利』を設け、この北東アジアにおいても引き続き前方展開と関与を通じ、同盟国に安全を保障すると説明した。その中で米軍も、10年におよぶ紛争地域からの撤収、2013年の財政悪化に伴う国防予算削減そしてなかなか進まぬ装備体系の近代化等様々な課題に直面しており、統合部隊の再構築にも時間を要すると述べた。今後5年間で、米軍部隊の規模は縮小されるが、各種の近代化努力により最新の装備を配備する事により米軍の態勢を維持すると概括した。同時に、2015年以降の国防予算が改善するとの楽観ではなく、予算枠が厳しい状況のまま推移する事にも、十分に配慮した軍事態勢の構築が必要と述べた。
 次に、米軍4軍種の戦力構成に関する決定内容を陸軍、海軍、海兵隊、空軍の順に具体的な数字を挙げつつ説明した。兵員数の削減、旧型装備品の退役、次世代装備品による近代化が主な決定事項であり、更なる国防予算の強制削減がされた場合の削減処置事項についても具体的な規模内容を語った。その際、この様な状況にあっても、空軍においては、いかなる高度な防空網にも対処し得る次世代の戦闘機等航空機の配備により、多くの旧型機が退役しても、十分に将来の脅威に対応可能との見解が示された。
 <QDRとリバランス>
 今後の削減が実行に移された場合、軍事態勢のリバランスは不可決であるとして、優先すべき分野として『サイバー』『ミサイル防衛』『核抑止』『宇宙』『海空戦力』『精密打撃』『ISR』『対テロ・特殊作戦』が挙げられている事を説明し、ミサイル防衛においては早期警戒と追尾能力の向上のために2番目のレーダーが日本に配備されることにも言及した。
 QDRのロードマップにおいては、厳しい国防予算の削減を行いつつも適切な軍事態勢のリバランスにより、2020年において米軍は最強の能力を維持確保し得るとしていると述べた。この態勢にあって、130ヶ国近くの国々と海上に展開する100万名を超える米軍人のうち5万名が日本に駐留し、あらゆるドメインに対処し得る能力を保持し、この地域の安定を保ち得ると語り、在日米軍司令官としてQDRを総括した。
 結びとして、今後20年にわたって迅速でより深い軍事態勢の革新を行っていくためには、いくつかの難しい決断も有りえるとし、その際、軍事能力を最適化し、この地域の平和と安定を確保するため、最強の訓練と装備を確保出きる様に努力したいと述べた。また、個人としては、常に日本の人々の『良き隣人』として過ごしていきたいと語り、講演を締めくくった。
 <聴講者との質疑応答>
 講演の後、安全保障に係る各種案件について軍事専門家同士が真剣に語り合うといった雰囲気の中、真摯な質疑応答が繰り広げられた。司令官は応答にあたって、ゆっくり言葉を選び、一つ一つの質問に丁寧に応答した。
 『偶発的衝突に対する対処』については、何をおいても救助が最も優先し、外交ルートでホットな状況をクールダウンする対応が重要だと語った。その衝突が日米安全保障条約の対象地域であれば、外部からの一方的な武力行使に米国は反対し、日米両国の部隊は高度な連携を保ち行動し得る事を外交の土俵で表明する事になるだろうと述べた。
 『オスプレー』については、デンプシー統合参謀本部議長の来日時に、司令官自身オスプレーに搭乗し、機体の信頼性と卓越した性能に深い感銘を覚えたと話した。フィリピンの台風被災時には、すみやかに現地に展開し他の救助ビークルでは対処し得ない困難な救援任務を完璧に遂行した事を紹介して軍事作戦のみならず大規模災害時の有効性にも言及した。
 『QDRの国防予算削減下におけるリバランスの実行可能性』については、空軍を例に取り具体的な説明により、リバランスを適確に実施する事は可能であり日本を含む北東アジアの安全保障に影響を及ぼさない事を明言し、講演内容を補足した。
 『System of Systemsに対する対応』として、高度な米国軍事システムと同じ土俵に乗る事無く、心理、情報、サイバー等の非対称システム領域で米国が挑まれた場合の米軍の対処を質問された。この質問に対し司令官は「我々が実施する演習へオブザーバー参加要請する事により『安全保障に寄与する枠組み』に参入させる事も有効な方策」であると述べ、安全保障に係る多国間会議の重要性についても言及した。
 最後の質問は『防衛装備移転三原則』に関連した質問であったが、軽く微笑みつつ「残念ながら、お答え出来る職責を有していない」と答えながら、戦闘機パイロットとして空自のF-15に搭乗した際の印象を述べた。「戦闘機の機能を最高度に発揮出来る高度の信頼性が備わっているのが直ぐ分った。この戦闘機を支える日本の防衛産業のレベルの高さを実感した」と語った。

【懇親会】
 懇親会は18時15分から約1時間半にわたり、200名近い関係者が集まり実施された。航空幕僚長齊藤治和空将、木原稔防衛大臣政務官、中谷真一衆議院議員、統幕、空幕、各司令部、幹部学校等の関係者、米空軍からは第5空軍司令官兼在日米軍司令官Lt. Gen. Salvatore A. Angelella、横田基地関係者そしてその他の来賓が出席して盛大な懇親会となった。
 冒頭、日米両国の国歌吹奏の後、外薗会長から英語で「空自と米空軍の間の相互理解と信頼を深めるため、本年も各種の活動を通じて貢献していこうと考えております。この目的に即して本日の懇親会では、旧知の方も、初めてお会いになる方も胸襟を開き、日米間のフレンドシップをさらに深めてください」とオープニングのスピーチがなされた。
 司会進行早坂理事の「The time you want comes. Please enjoy the rest of time, delicious food, drinking and chatting.」を合図に一気に場はくだけ和気藹々とした宴となった。昨年度からの試みとして、より親密な懇親の場を設けるため、会長の挨拶以外は全て自由な懇談の時間とされ、会が進むにつれて「QDRと北東アジアの安定」「大統領の訪日」等のやや硬めの話題から「SPORTEX等のゴルフ談義」「家族の近況」等の和やかな話題まで、硬軟併せた懇談の輪が会場各所で作られた。予定の2時間弱の宴はたちまち経過し、司会進行の閉会アナウンスに続き、小川副会長の閉会の言葉と納杯の発声により熱醒めやらぬ懇親会も閉会となった。(杉山理事記)


 

平成26年度JAAGA総会開催