石塚前会長、村木新会長、ご来賓の皆様及び日米エアフォース友好協会の皆様、こんにちは。本日は皆様と共に数時間過ごせますことを大変光栄に思います。また、講師としてご招待くださりありがとうございます。私は航空自衛隊とアメリカ空軍の友好促進を目標に掲げている貴団体 JAAGAの活動に敬意を表します。
今日は我々の嘉手納基地での任務とその任務を遂行する各部隊について話をさせて頂き、更になぜ嘉手納基地が合衆国にとって戦略的基地なのか、なぜ太平洋の要石と呼ばれるのかということにも触れたいと思います。また
EAF(部隊展開構想)とAEF(航空機動展開部隊)についてもご説明いたします。最後に、我々の戦闘部隊のAEF、「不朽の自由」作戦であるテロとの戦い、及び「イラクの自由」作戦への支援と、合衆国の北朝鮮に対する柔軟性のある抑止力への嘉手納基地の関わり方をお話いたします。
我々の任務は至ってシンプルです。それは日本とアメリカの国益を守るために、統合された展開可能な空軍力を有した即応態勢と機能的な基地を提供することです。この目的達成のため嘉手納基地では、軍を動員し、展開するための部隊支援施設をはじめ、戦闘機、空中給油機、レスキュ・ヘリコプタ、空中及び地上のレーダーシステムを常に戦闘可能な態勢に維持しています。第18航空団は航空機を運用し、戦い、そして勝つ準備ができている他に類を見ない航空力を有したチームであります。空軍では嘉手納基地をその戦略的地域からしばしば太平洋の要石と呼びます。空路では東京から約2時間、朝鮮半島の非武装地帯と台湾からは45分です。沖縄での我々の存在が両国の国益である地域の平和と安定をまもり、ひいてはすべての人々に繁栄をもたらします。アメリカは約40%の貿易をアジアとしており、わが国の経済は当地域のほとんどの国々と相互に依存している状態にあります。
日本を含めた当地域の国々ではアメリカの存在を評価して頂いています。わが軍は環太平洋、特に西太平洋地域の利益を守るという現実的なコミットメントを示しています。大きな紛争やテロ攻撃が起こった場合、或いは我々の国益への脅威があった場合には時間が勝敗を決めることになるでしょう。また弾道ミサイルなどのテクノロジの発展、改良によりリアクション・タイムはどんどん短くなる一方、大量破壊兵器は拡散しています。
第18航空団は横田基地にある第5空軍とハワイのヒッカム空軍基地にある太平洋空軍の下部組織であります。当基地には4軍種、国防総省出先機関、国務省及び米空軍の五つのメイジャ・コマンドを支援しています。航空団には約6,500人の要員がおります。家族、シビリアン、日本人従業員や契約関係者を含めた基地全体の人口は21,000人になります。更に航空団には総額40億ドルの
F-15、KC-135、E-3、HH-60などの航空機を含めた60億ドルの資産があります。
沖縄における嘉手納の存在は島の経済に大きく寄与しています。年間の経済効果は7億ドル以上と試算され、この金額には日本人従業員の賃金、基地外の家賃、そして地元業者への契約工事等の契約が含まれています。更に嘉手納基地内の土地を所有している約7,400人の地主の方々へは日本政府から相当額が支払われています。
ここで嘉手納基地の戦闘空軍力についてお話したいと思います。太平洋空軍傘下の第18航空団は嘉手納基地のホスト部隊であります。航空機80機を有し、空軍の海外基地では一番大きい戦闘混成航空団です。
第44、第67戦闘中隊にはF-15が各24機あり、航空力を誇っています。F-15はAIM-7、AIM-9とAIM-120などのAMRAAMの新型中距離空対空ミサイルを8発搭載できます。1991年の湾岸戦争では米軍の戦闘機の中で最も空対空の成功率が高かったのが
F-15です。第909空中給油中隊のKC-135*15機は西太平洋地域の米空軍で唯一常駐している空中給油機です。どのような不測の事態が起こっても米軍の航空機に重要な空中給油をします。AWACS
として知られているE-3センチュリ*2機は第961航空空中管制中隊に所属しており、どのような危機に直面しても偵察と統制の両方を提供し指揮統制において重要な役割を担っています。HH-60
ブラックホーク・ヘリコプタ*10機は第33救難中隊に所属しており、昼夜飛行可能で有事の際でも平時でも遭難者のための救難任務にあたっています。その他に嘉手納には第18航空団の直属部隊ではない13の準構成部隊があります。例えば第82偵察中隊に所属する
RC-135リビット・ジョイントは太平洋地域の電子偵察を行います。第353特殊作戦群ではMC-130を10機有し戦闘及び物資と人員の戦術空輸を行います。海軍のP-3は第7艦隊のための訓練と支援が任務です。3機から10機のP-3オライオンがシー・レーンの偵察を行っています。また海軍と海兵隊の戦闘機と海軍の
C-12輸送機2機が嘉手納から展開しています。
アメリカにとっては日本より重要なパートナそして同盟国はありません。両国民は約2世代に亘り史上まれに見る強さの友好を築きました。新しい脅威に立ち向かい、テロとの戦いを展開している今、両国は
90ヶ国が連なる史上最大の同盟関係の中で、それらの国と共に繁栄と安全を促進する活動に参加する類いまれな機会を手にしました。
ご承知のようにアメリカ大統領は、米国が同盟のパートナと共に南西アジア地域の自由と平和を促進するための努力を続けると3月17日に発表した際に、自由と民主主義、テロとの戦いへのコミットメントを再び強調しました。
我国は自国の軍隊を、アルカイダ、タリバン、オサマ・ビンラディンそしてサダム・フセインらとの戦いのために動員しました。
ブッシュ大統領は更に「人間としての自由への渇望とその力は、地上の全ての生き物から感じとることができます。そして最も強い自由の力は、憎しみや暴力を乗り越え、人類に与えられた創造性を平和の探求のために使うことにあります」と語りました。
イラク解放の作戦開始から72時間以内に、同盟軍は3千人以上の捕虜を捕らえ、数百人の民間人は食料や水のために投降してきました。7日も経たない間に
1万5千ソーティーを実施し、その目標はイラク政権の中枢として知られていたイラク情報機関の司令部や宮殿警備隊の宿舎、兵器を隠すために使われていた大統領宮殿などでした。イラク各地や首都バグダッドとその周辺への攻撃は明らかに効果がありました。
皆さんは、「イラクの自由」作戦のためにどうやって3万7千人もの空軍兵士を展開したのかと不思議に思うかもしれません。これはEAFと呼ばれる新しい部隊展開構想をもとに、現在のアメリカ空軍が運用されている結果であります。第
2次世界大戦や朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、「イラクの自由」作戦を考えますと、構想がどのようなものかおわかり頂けると思います。空軍力のほとんどはアメリカから戦闘に参加するために前線に行きました。冷戦時代に空軍が何千人という兵士と航空機を展開していたのは、前方展開部隊であり、配備された場所で戦うようになっており遠征軍ではありませんでした。
AEF(航空機動展開部隊)についてご説明します。空軍全体の戦闘力を、10個のほぼ同じ能力の戦闘軍に分割しました。各AEFあたり航空機175機、兵士1万
5千人以上で編成されています。機種は爆撃機のB-52、B-1、B-2、戦闘機のF-15とF-16、またU-2やAWACSなど、全機種が含まれています。
AEFのサイクルは15ヶ月です。初めの10ヶ月は所属基地に於いての通常訓練や、レッド・フラッグ、コープ・サンダ等の演習の期間です。次の2ヶ月は準備期間で、最後の3ヶ月が90日前後の展開期間となっています。そのサイクルを終えると次のサイクルが始まるまで休息をとりながらの通常の勤務体制となります。
部隊指揮官や兵士がより良い展開計画を作成できるように、また展開時期を予測しやすくするために1999年の9月にAEFのシステムが導入されました。現在は、3回目の15ヶ月サイクルを実施しています。兵士はこのサイクルを中心にしてこれまでより自分たちの生活・人生設計を立てやすくなりました。展開する時期がわかっていることにより、子供を育てたり、教育を受ける計画がしやすくなりました。最良の訓練と
AEFの輪番制のコンセプトを戦闘力構築の土台とするこの方法は、兵士をより満足させ、空軍に残る材料となり、少ないストレスを軽減し、高い士気で多様な任務を完遂できる要員を空軍に提供します。
「イラクの自由」作戦には当初AEF7とAEF8が展開していました。しかし作戦の規模の大きさから、7及び8を展開させたまま、必要な人員と航空機を現地に派遣するため、
AEF9と10、更にAEF1と2のいくつかのエレメントを展開しました
嘉手納では第18航空団がAEF5と7を支援しています。嘉手納から展開していった750名の派遣期間は延長されたままです。そのほとんどはF-15の中隊と第
961航空空中管制中隊所属です。今年の2月末に帰還する予定でしたが、6ヶ月以上延長されました。ECSと呼ばれる戦闘展開支援でAEFを支援しています。憲兵、施設、福利厚生、医療などの部隊から支援要員が現在展開中の
AEF7の支援でECSとして派遣されています。AEFの目的は、世界中の多種多様な任務に対応するために、兵力をまとめ、訓練し、装備することにあります。兵士とその家族により安定した、計画の立てやすい生活を提供しながら、国家の目的を支援するのが焦点です。
韓国所属の米軍は、半島での有事に備えるためAEFでは展開せず、現地に駐留しています。従って最近、在韓米空軍は11番目のAEFと認定されました。
AEFの仕組みについて説明しましたので次に、AEFの活動例えば、テロとの戦い(不朽の自由作戦)と「イラクの自由」作戦への支援と、北朝鮮に対する柔軟な抑止策について、この一年の嘉手納基地の活動をお話します。
南方監視作戦のため、2002年9月に初めてF-15の第44戦闘中隊を南西アジアに派遣しました。2002年12月には第67戦闘中隊が交代要員として派遣され、今月中旬(6月)まで展開していました。
F-15のパイロットと整備員、任務支援要員が展開していたために、イラク空軍は何十億も投資した戦闘機をただの一機も、繰り返しますが、ただの一機も発進できなかったと信じています。
第961航空空中管制中隊は、南方監視作戦と「イラクの自由」作戦において展開したAEF5と7を支援しました。AEF5に対してはクルーと支援要員を、
AEF7に対しては支援要員と航空機を支援し、統合航空作戦所に100%正確な航空写真を提供しました。この中隊は日韓共催のサッカー・ワールド・カップの開催期間中も監視活動を実施しました。
第909空中給油中隊は、E-3やF-15が南西アジアに展開する際に、またほかの飛行機が太平洋地域に来る際の空中空輸支援をしました。この中隊からは
2個の部隊がタイのウタパオとシンガポールのパヤ・レバー基地へ、B-1、B-2、B-52の爆撃機と空輸機支援のため派遣されました。爆撃機はアフガニスタンへ向かう途中であり、輸送機は人道支援物資を運んでいました。第
909空中給油中隊は、北朝鮮への抑止の一つとして使用されている、グアム島のB-1、B-52と、朝鮮半島に派遣されたF-117の支援に大きく寄与しました。
第33救難中隊では、「不朽の自由」作戦への支援として、フィリピンのバシラン島周辺での統合任務部隊510
の作戦における戦闘時捜索救難支援のため、ザンバオンガに140日間展開しました。その期間、第33救難中隊では
15回の戦闘任務を完遂し、アメリカ空軍と海兵隊、フィリピン人19人の命を救いました。この中隊では戦闘警戒のほかに、多国籍軍に対して負傷兵/死亡兵後送訓練等を実施しました。8月にはクルー2組とヘリコプタ2機を朝鮮半島に派遣し、多国籍軍による韓国海軍の艦艇の救難作業を、30分の出動待機、24時間態勢で支援しました。また、ワールド・カップ期間中も、捜索救難への30分の出動待機態勢で支援しました。
第18作戦支援中隊は、21名の航空自衛隊員のための一週間にわたる、歴史的な空中給油の事前研修に、フライト研修や見学、オリエンテーション、講義の分野で支援しました。この研修により、共同運用を促進しながら協調関係と相互運用性が増幅されたことを実感し、多国籍軍による演習への自衛隊の参加準備ができたと確信します。空中給油訓練は現在の航空自衛隊の能力を向上させ、将来の訓練演習に参加するための準備を整えます。更に、空中給油機を導入するための準備となります。航空自衛隊との空中給油訓練には第
632航空管制隊も参加しました。今回の共同空中給油訓練と要撃管制戦闘訓練の究極の目的は、日本防衛のために、共同航空運用を促進する技術の習得と改善にあります。
AEFプログラムの運用全体に及ぼす影響についてお話します。18ヶ月以上前の2001年10月7日に「不朽の自由」作戦が始まって以来、現役、州兵、予備役の空軍チームは当作戦の四分の三以上の任務、つまり約
8万ソーティを実施しました。空軍の爆撃機、戦闘機、輸送機、タンカー、情報収集機、偵察機が毎日出動しています。B-1、B-2、B-52、F-15、F-16、A-10、及びAC130はアフガニスタンにおける戦闘任務の75%以上を実施し、1万トン近い弾薬(これも全体の約
75%でありますが)を投下し、約四分の三もの攻撃目標に打撃を与えるか破壊しました。アフガニスタンでの攻撃作戦中、空軍では39,650回の空輸任務を飛行しました。これらの任務で41万8千人と42万9千トンの物資をアメリカからアフガニスタンに輸送しました。
嘉手納から犠牲者も出ました。第353特殊作戦群所属の2名はフィリピンでの任務中に命を落としました。彼らは究極の代価を払いましたが、イラク解放のために戦って亡くなった英雄と同じように、自由と民主主義を守るための勇気と献身とコミットメントはいつまでも忘れられることはないでしょう。
「イラクの自由」作戦では800機以上を動員し一日約1000ソーティを実施しています。3月19日に戦争がはじまってから先週までに、空軍では同盟軍の全ソーティの半分にあたる
1万8千ソーティを実施しました。その期間中、同盟軍の航空機は2万3千発以上の弾薬を投下し、その約70%は精密誘導兵器でした。輸送任務もあわせて実施しており、これまでに
6千5百ソーティを実施しました。同盟軍は成果をあげましたが、それでも全体の84%にあたる200回以上の戦闘時捜索救難も実施しました。大変残念なことでありますが、私たちの息子や娘のような兵士を亡くしました。
122名が戦死し、8名が戦犯として捕らえられていると思われます。
未来に向かって進んでいくためには、覚悟が必要であります。この地域の有事の際には航空力が軍事的選択となることは周知の事実であります。その事態というのは政治的な抑制の変化によって起きる限定的な目的であると思われます。しかしこの紛争ではわが軍のみで戦うのではなく、同盟国といっしょに戦います。コリン・パウエル国務長官が就任式で「世界は、民主主義と自由のもとで自らの運命を切り開いていく権利を世界中の人に与える新しい道を歩み始めました」と語りました。日本政府とアメリカ政府は、この地域の平和と繁栄にとって、アメリカ軍の存在がきわめて重要であると再確認しました。
米軍と同じように航空自衛隊には長くて豊かな歴史があります。1954年6月3日に日本の国会で航空自衛隊の設立が決定され、その約1ヵ月後の7月1日に設立されました。それから
50年近く、航空自衛隊は制空権を維持し、彼我不明機の領空侵入を防ぎ、平和と安定を守ってきました。貴団体でも2004年の航空自衛隊設立50周年を祝賀するでしょう。
両空軍の未来を思うとわくわくします。両軍共に誇りとする伝統と約束された未来があります。今では誰も航空宇宙力の価値について疑問を呈する人はいません。困難な問題に立ち向かう勇気とコミットメントをお互いに持ちつづけるでしょう。われわれの次世代が、任務遂行に必要なテクノロジや技術を習得していることも確認しなければなりません。現在、空軍では
F-15を先進戦術戦闘機のF/A-22ラプターと換装する計画があります。しかし、戦いでの勝利や紛争解決は、勇気とコミットメントと人間性によるところも大きいことを忘れてはなりません。
ブッシュ大統領が就任前にこう言いました。「アメリカはその歴史と選択により、世界と大きく関わりつづけており、自由を善しとする権力のバランスを保っています。このことを維持していくためには、アメリカの重要な利益を守り、最も高い理想を掲げている外交政策が必要であります。その外交政策は透明で首尾一貫した自信に満ちたものであり、われわれの価値を正しく反映し、友人にも正直であるものでなければなりません。」日本はアメリカの友人、力強い友人であり、自由と民主主義を守りつづけています。
嘉手納基地所属の各部隊やAEFを通しての空軍への支援に対する皆さんの理解を、私の話で深めることができましたでしょうか。航空力の観点から見たとき、嘉手納は太平洋の要石であり、われわれの任務は日本の防衛と日米の両国の国益を守ることにあります。
そのような中でもAEF、テロとの戦いに柔軟に対応し、更には強力な軍をもってして北朝鮮の監視を続けています。
日米エアフォース友好協会は航空自衛隊と在日米空軍にとって大事な支援団体であり続けてきまし、今後もそうあり続けることでしょう。平和と安定を守る活動をしている第
18航空団および嘉手納基地の関係者のコミットメントについて皆様に発表する機会をいただきましたことに感謝申し上げます。 ご静聴有難う御座いました。(平成15年4月25日)