平成26年2月24日(月)15時から約2時間にわたり、グランドヒル市ヶ谷において、航空幕僚監部装備部長小野賀三空将補を講師としてJAAGA講演会が開催された。今回は「新戦略・大綱・中期に紡ぐ空自後方」と題して、防衛力整備と後方の関係を分かり易く紐解きながら、新たに定められた国家安全保障戦略を具現化し、戦略目標を達成するための基盤となる後方について、その現状と展望が語られた。
 講演に先立ち永岩副会長より「南西域の情勢や新たな戦略、大綱、中期に関心が集まる昨今、演題は極めて時宜を得た内容である」旨の挨拶があり、祝電が披露された。正会員57名、法人会員30名、個人賛助会員8名、計95名が参集し熱心に聴講した。
 講師は防大26期生(国際関係論)で職種は高射であり、空幕装備体系課長、2術校長、1補長、防衛監察本部監察官を歴任、一昨年7月より現職にある。講演は、その全体像を聴講者がイメージアップ出来るように、冒頭、以下7項目の論旨、論点が示された。
 @国家安全保障戦略(以下NSSと記述)について
 A防衛力はNSSの一翼を担う
 B大綱→中期→年度はNSSの一具現化プロセス
 C年度は、資源(予算)を具体化する
 D後方は、資源を防衛力に造成し、維持する
 E防衛力の造成・維持で戦略を紡ぎ上げる
 F防衛力の造成・維持の課題
 この論旨の流れに沿いつつ、その論点の陰影を深めながら講演は進められたが、講師の複数回にわたる米国留学、国際関係論専攻、防衛力整備の主務者等、幅広い経験と学識に裏打ちされた見識が随所に現れ、興味の尽きぬ内容となった。
 @〜Aについては、勃興する隣国の状況を踏まえつつ「元寇の図」をあげ「歴史的な試練に立ち向かう」ためには、「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を旨としたNSSは機宜に適った政策であり、「工具箱にハンマーしかない」愚を犯すことなく、政治・経済・外交・社会・文化等と共に防衛力が総合的な安全保障の一翼を担うと語った。B〜Cについては、「グレーゾーンへのシームレスな対応」等、現状における問題点の是正を含め、NSSの具現化を大綱→中期→年度の中で図り、「統合機動防衛力」の構築・運用が喫緊の課題と述べた。また、資源(予算)について、物件費、新規後年度負担、旧正面と旧後方の経費変遷等の切り口から、空自の新規装備品導入が重視されている事を説明した。D〜Eについては、「空の勝利は技術にあり」の言葉の通り、予算の制約下にあっても急速な技術変化に対応した能力向上を図る必要があり、後方はその造成・維持の役割を担うと述べ、具体的な努力事項として、総合取得改革による中期における実質的な財源確保(7000億円捻出)の方策について説明した。
 Fについては、今後の後方に係る課題として、「防衛生産・技術基盤への手当」及び「資源の制約、効率化への努力」を取り上げ、将来に向けて努力すべき方向性について言及した。更に、全般を総括しつつ「日米同盟は戦略を紡ぐもうひとつの縦糸」と述べ、米空軍と空自の絆を深めるJAAGAのメンバーに話をすることも戦略的に意義のあることとして講演を締めくくった。
 2時間弱の講演の後、村木元空幕長等から質問がなされたが、いずれも現下の厳しい状勢において前進する空自に想いを込めたものであり、講師からも空幕防衛部の担当者時代に空幕長から受けた薫陶内容が紹介された。最後に、永岩副会長から講師に対し謝辞があり、記念品が渡され講演会を終了した。 (杉山理事記)


 

 

JAAGA講演会 : 空幕装備部長 小野将補