講師 : 空幕防衛部長 三谷直人 空将補  
演題 : 航空自衛隊の現状と課題
期日 : 2月17日

 講師は防大29期生で職種は航空機整備であり、空幕人事計画課長、5空団司令、1補長、防衛監察本部監察官を歴任、昨年8月より現職にある。講演は、その全体像を聴講者がイメージアップ出来るように、「航空自衛隊の現状」と「今後の課題」に大別しつつ、以下8項目にそって行われた。

<航空自衛隊の現状>
T 我が国周辺の安全保障環境
U 大綱・中期・27年度予算
V 日米防衛協力
W 防衛協力・交流
<今後の課題>
X 南西地域の防衛体制の強化
Y 宇宙利用の推進に係る取り組み
Z サイバーに係る取り組み
[ 能力構築支援

 各項目ごとに陰影を深めながら進められた講演は 、講師の米国留学、防衛力整備の主管者、部隊指揮官等、幅広い経験と信念に裏打ちされた見識が随所に現れ、興味の尽きぬ内容となった。
 まず、空自のおかれた現状を整理しその概要が、一つ一つ具体的事象・案件を踏まえつつ語られた。T〜Uについては、日本周辺空域における中国やロシアの航空機による活動の活発化、北朝鮮の弾道ミサイル等の活動が紹介され、大綱・中期・27年度における防衛力整備上の主要事業が説明された。
 V〜Wにおいては、アジア太平洋地域及びグローバルな安全保障環境の変化に伴う「日米防衛協力の指針」いわゆる「ガイドライン」見直しの必要性とその内容に関する説明がなされると共に、近年の具体的な日米防衛協力における空自の取り組みが語られた(RFA・CNG等の日米共同訓練、グローバルホークの三沢一時展開、TPY-2経ヶ岬配備、F-35リージョナル・デポの設置等)。
 更に、全般的な防衛協力・交流においては、空幕長等と各国空軍参謀長等間のハイレベル交流が拡大し、空自創設60周年記念に伴う空軍参謀長等招へい行事(ACDJ)が成功裏に終了したことに言及しつつ、実務者間、部隊間交流、教育交流、そして多国間対話等が積極的平和主義を支える重要な施策として鋭意推進されていることが語られた。
 これらの現状を踏まえ、今後の課題においては、Xの項目として「航空優勢の確実な維持」を主眼とした南西地域の防衛態勢の強化の在り方が、静かな中にも強い思いを感じさせる語り口で説明された。
 Yについては、「宇宙利用の推進」に係る取り組みに関する内容であり、宇宙状況把握による「スペースデブリとの衝突防止」等、空自が新たに対処すべき宇宙空間に係る説明がなされ、一世代以上古いJAAGA会員にとっては新鮮かつ瞠目すべき聴講内容となった。
 Zにおいてサイバーに係る取り組みが語られたが、宇宙空間と同様、新たな対処空間の出現に、聴講者一同、あらためて多種多様な任務に対応を迫られる空自の現状と課題に想いを馳せた。「兵器システムに対するサイバー攻撃対処機能の整備」「サイバー攻撃等対処要員の育成」が喫緊の課題と語る講師の言葉に肯きつつ聴き入る会員も多かった。
 最後の項目である[「能力構築支援」では、「空自の有する知見を活用し途上国の軍等の能力向上を支援」する活動が紹介された。ベトナム、インドネシア、フィリピン等への「飛行安全管理」「航空気象」等の教育指導を通じた信頼醸成活動であり、空自の幅広い活動の一端を如実に表すものであった。
 1時間半の講演の後、聴講者から多くの質問がなされたが、いずれも現下の厳しい状勢において前進する空自に想いを込めたものであり、講師からも空幕担当者時代に諸先輩から受けた薫陶内容が懐かしげに披露され、空自の今後の対応に係る信念が吐露された。
 最後に、外薗会長から、「空自の現状と課題に係る丁寧かつ具体的な説明」と「今後予想される困難な局面においてもゆるぎない確固とした信念の表明」に深く感じ入ったとする講師に対する謝辞があり講演会を終了した。(杉山理事記)


 

 

JAAGA講演会 : 空幕防衛部長 三谷将補