平成25年2月21日(木)15時から約2時間にわたり、グランドヒル市ヶ谷において、航空幕僚監部運用支援・情報部長丸茂吉成空将補を講師としてJAAGA講演会が開催された。講師は最初にコープ・ノース・グァムに対する支援への感謝と、初めて人道支援、災害救援訓練に参加した事、及びエピソードとしてロシア軍機Tu-95が飛び入り参加(笑)したという話題を述べ、講演は和やかに開始された。今回は「対領空侵犯措置の現状」と題し、尖閣周辺における情勢とそこから生じる課題への取り組みについての内容が主であったため、会場に参加した正会員60名、法人会員等30名の計90名は、タイムリーかつ大変興味深い話題に熱心に聴き入り、時間ぎりぎりまで活発な質問がなされていた。
 講師は防大27期生で、職域は操縦(F-4)。空幕防衛課長、次期戦闘機企画室長、第8航空団司令などを務めた後、昨年1月から現職で活躍中。講演概要は、
 @最近の全般的状況
 A法的位置づけ
 B行動概要と体制
 C尖閣諸島を巡る情勢
 D課題と取り組み
 Eまとめ
という順で進められた。
 @からBについては、「正会員以外を対象に」と断った上で、領空と対領侵措置、防空識別圏、スクランブル回数、国際法上の位置づけ(領空主権の排他性)、国内法上の位置づけ(警察行動)、武器の使用(必要な処置)、武器の使用が撃墜に至った事例、我が国における信号射撃の事例(武器の使用ではない)、警戒管制部隊・戦闘機部隊の配置、対領侵措置の要領等などを分かり易くかつ明確に説明。特にスクランブル回数については23年度が過去20年間で最多となる総計425回であった事、内訳は156回(約37%)が中国機に対するものであった事、中国機に対する緊急発進回数は、20年度31回、21年度38回、22年度96回、23年度156回、今年度が3/四半期までに既に160回であり過去最多である事を強調。
 CからEついては、2012年12月13日の、中国Y-12の領空侵犯事案について、海上保安庁の巡視船からの通報による緊急発進であった事、現場空域に到着したときには、領空から出た後であった事から、那覇から尖閣周辺まで400q以上ある事と低高度小型機への対応が課題であり、その取り組みとしてE-2CやAWACSによる監視の継続と海上保安庁との連携、日中ホットラインの設置等を挙げ、また、人的処置(充足)、警戒監視と対処等に必要な予算処置(25年度予算)、中長期的な課題への取り組みとして、次期大綱、中期防において処置されることが予測される事を説明。
 最後にまとめとして、「日本が挑発を与えてきた」という口実を中国に与えないために、対応手順の明確化と徹底、緊急事態に対しての適切な対応、記録・証拠の収集、国際世論へのアピールなどいわゆる世論戦が重要と認識している事、日米同盟関係を万全な状態にするために、各種戦略協議や作戦計画の立案、共同訓練の実施などの他「JAAGAに期待してます」と締めくくった。
 約1時間を越える講演に続き、質疑応答が行われた。聴講者からは、中国の警戒管制機の運用能力、中国軍の訓練規模、運用能力など、マスメディアを通じてだけでは知ることのできない中国軍の能力に関する質問が多く寄せられた。また、永岩理事長から、米中の3カ国シンポジウムに参加した際に、信号射撃、防空識別圏について日米参加者が中国参加者に説明した経緯があった事から、中国軍人は国際的な常識を知らされておらず、メディア戦が重要である旨の発言があった。最後に、吉田会長から講師に対し謝辞があり、記念品が渡された。(渡部理事記)


 

 

JAAGA講演会 : 空幕運用支援・情報部長 丸茂将補