平成27年度の「つばさ会・JAAGA訪米団報告会」が2月25日(木)1320からグランドヒル市ヶ谷「芙蓉の間」においてJAAGA講演会に先立ち実施された。講演に先立ち外薗健一朗会長より「冷たい天候の中、御参集頂いたことに感謝する」旨の挨拶がなされると共に、空自出身の宇都隆史参議院議員からの祝電が披露された。当日はJAAGAによる米空軍嘉手納基地等研修の初日と日程が重なってはいたが、彌田清担当理事の司会進行により「石野次男理事によるJAAGA訪米団報告会」及び「空幕防衛部長 三谷直人空将補による講演」が順次実施され、正会員61名、法人会員22名、個人賛助会員4名、計87名が熱心に聴講した。

1 JAAGA訪米団報告会(1320〜1350)概要
 (1)報告者:石野次男 理事 
 (2)訪米期間:平成27年9月7日(月)〜9月18日(金)
 (3)訪米団:外薗健一朗会長を団長に、永岩顧問、森下、渡邊、小野田、山崎、
         石野(次)、平田、米沢各理事の計9名 
 (4)行動概要:
 
<ハワイ>9月7日(月)〜9月9日(水)
 PACAF(太平洋空軍司令部) 司令官表敬、意見交換
 PACOM(太平洋軍司令部) J5訪問、意見交換、統合指揮所研修
 総領事表敬、総領事主催夕食会(三澤康ハワイ総領事主催)
 パンチボール国立太平洋記念墓地献花
 
<バージニア・ラングレー基地>9月10日(木)〜9月11日(金)
 ACC戦闘空軍司令官表敬、意見交換
 第1戦闘航空団研修 (F-22×2個飛行隊、T-38×1個飛行隊)
 第497ISRグループ研修 (情報を一次処理するDGS(Distributed Ground Station))
 戦闘空軍司令官主催夕食会
 
<ワシントン>9月13日(日)〜9月17日(木)
 米空軍協会(AFA)コンファランス参加
 空軍参謀本部(A2、A3、A5/8)訪問、意見交換等
 統合参謀本部(J5)訪問、意見交換
 在米日本国特命全権大使表敬(佐々江賢一郎 特命全権大使)
 空軍協会会長訪問、懇談(Scott Van Cleef.AFA Chairman of the Board)
 JAAGA名誉会員との交流(エバハート退役大将(Gen.(Ret.) Ralph E. Eberhart)宅での
  カクテルパーティー、名誉会員委嘱式、JAAGA主催夕食会等)
 *関連記事 だより49号「つばさ会/JAAGA訪米団」AFA総会参加等報告(米沢理事記)

2 報告内容(成果の概要)
全般
 (1) 新たな名誉会員の参加により、名誉会員との交流が一層意義深く充実したものと
   なった。
 (2) ヒッカム及びラングレーの各基地訪問は、在日米軍勤務経験者である指揮官等の
   積極的な支援、防衛駐在官及び連絡官の献身的調整により大変充実したものと
   なった。
 (3) 各司令官等との意見交換及びAFAカンファレンスへの参加等により、米空軍の
   動向に関する様々な情報を収集できた。 (4) 全般を通じて、米側の日本及び空自
   に対する信頼と期待の高さを改めて感じた。

米側の興味ある発言等 (注)
 訪米中の米空軍協会(AFA)コンファランスにおいて聴講した講演、各司令官等との
 意見交換の内容について、共通した内容を4項目の視点に弁別整理して報告した。
 主な講演者と講演題目は以下の通り。
カーター国防長官(Ashton B.Carter, Secretary of Defense) 「Reinventing Aerospace Nation : A Path to Offset 3.0」
ジェームス空軍長官(Ms. Deborah Lee James, Secretary of the Air Force)「Reinventing Aerospace Nation」
ウエルシュ空軍参謀総長(Gen. Mark A. Welsh)「Air Force Update」
カーライル戦闘空軍司令官(Gen. Carlisle)「Fifth Generation Warfare」
ロビンソン太平洋空軍司令官( Gen. Lori J. Robinson) 「You’ve Got to Have Friends; Building Pacific Airpower Partnerships」

(1)米空軍の状況について
現在の米空軍は小さく、古く、忙しい。米国の航空宇宙立国としての優位性が脅かされ
 つつある中で、予算状況が厳しい状態にある。
相手が思いもよらぬ方法で対応し、将来にわたって優位性を確保するように米空軍は
 改革を進めねばならない。
鍵となるのは人であり、ゲームチェンジャーとなる技術、併せて調達プロセスを含めての
 効率化と迅速化の実現が重要である。
後方支援システム及び兵器システムへのオープンアーキテクチャーの活用、民間技術
 システムの活用が緊要である。
技術革新を牽引する可能性の高い地域(シリコンバレー)に要員を常駐させ、技術革新
 に取り組んでいる。
エアマン、そしてその家族が戦力の基盤である。
今後20年を見通すと、航空宇宙優勢、ISR、迅速かつグローバルな機動、グローバルな
 打撃、多分野にまたがる指揮統制が目指すべき方向である。 Air Force Operating
 Concept(9月15日に発表)
作戦的迅速性(operational agility)を強化すべきである。
航空、宇宙、サイバーの3分野をいかに統合して運用するかが重要な課題だ。
第1の優先的課題:人員を如何にケアするか
第2の課題:レディネスの維持 ・第3の課題:空軍全体の活動のスピードアップ
調達を改革して迅速性と経費の削減を追求しなければならない。

(2)中国のECS(東シナ海)/SCS(南シナ海)における活動について
中国のSCSにおける活動に大きな懸念を有している。
この緊張に軍事的手段を用いるべきではなく、平和的手段を追求、長期間を要する
 懸案事項と認識している。
中国に対して、航海の自由の確保と国際的ルールに従うべきという、レッドラインを
 明確に伝えている
中国軍は驚異的なスピードで近代化しており、深刻な相手と認識している。
日米同盟の強力な絆を示すことが中国に対する最大のメッセージだ。
誤解を防止してエスカレーションを避けることが緊要だ。
中国軍とのコミュニケーションを活発化させるべく努力を継続する。

(3)日米協力について
新ガイドラインを大いに評価、相互運用性の向上が日米協力の中心的課題だ。
通信ネットワークの連接、AWACSなどの情報共有、空中給油の相互活用などが
 運用の柔軟性と経済性を倍化させる。
日本の新たな宇宙基本法、特にSSAの推進について大いに評価する。
9人のアジア太平洋諸国空軍の参謀長が米空軍にとって最も重要なこの会議で
 一同に会したことは、大きな意義がある。

(4)個別の装備品について
今後のプログラムで、F−35、KC、LRS−Bが引き続き最も優先度が高い。
核の近代化も鋭意、推進する。 ・コンバット レスキューヘリは人員救助という重要な
 任務を担う。
E−8、EC−130、E−3の近代化は必須である。
F−22の主たる運用目的は航空優勢の確保にあるが敵領域下の脅威範囲内に
 侵入して対地攻撃も実施する。
F-22はF−15やF−16編隊を含めたミッション・コントロールの中核として活用し、
 高脅威下の攻撃任務はF−22の投入なしでは行い得ない。
F−35プログラムは“ゆっくり確実な進展”の段階から“急激な成長、加速”へと
 シフトし困難な時期は終了した。
米空軍のF−35AのIOC宣言も真近に迫っている。
第5世代戦闘機は第4世代戦闘機の延長線上で考え作り、大変高価なものになって
 しまった。
第6世代の戦闘機は30年後の戦闘環境を念頭に置き、レーダー、超音速巡航、
 低価格と拡張性、長距離爆撃機やその他多くの様々な兵器との運用を考慮し、航空
 優勢を確保するため、どの様なウエポンシステムが必要か検討する。
第6世代の戦闘機は、第5世代の延長では考えていない。
高出力エアボーンレーザーは次世代のゲームチェンジャーであり、こうした指向性
 エネルギー兵器が実用化される時期は大方の予想より早くなるだろう。
イノベーションの適確な取り込みが重要だ。

名誉会員との交流
  昨年、JAAGAは米側の名誉会員として第5空軍司令官歴任者に加えて、JAAGA
発足の1996年以降の太平洋空軍司令官歴任者を新たに対象として名誉会員委嘱を
打診したところ、ベガード元大将(Gen.(Ret.) Begart)、チャンドラー元大将(Gen.(Ret.)
Chandler)、ノース元大将(Gen.(Ret.) North)、カーライル大将(Gen. Carlisle)の4氏に
同意いただき、夕食会の前に外薗会長による委嘱式を行った。

AFAコンファレンス 
 9月14日から3日間にわたった航空宇宙コンファレンスはジェームス空軍長官の基調
講演の他、ウエルシュ空軍参謀総長、カーライル戦闘空軍司令官、ロビンソン太平洋
空軍司令官による講演や各種パネルディスカッション等を聴講した。  

 以上、30分余りの短時間ではあったが、密度の濃い報告内容であった。最後に今回の訪問に際して支援を受けた空幕の関係幕僚各位、事前の調整から現地での案内まで多大な支援を受けたPACOM司令部連絡官の齋藤1陸佐、PACAF司令部連絡官の竹岡1空佐、田中2空佐および猪山2等空佐、防衛駐在官の小川1空佐と廣田2空佐、そしてつばさ会及びJAAGA会員に感謝の念を示しつつ、石野(次)理事によるJAAGA訪米団の報告は終了した。 (杉山理事記)

 


平成27年度「つばさ会・JAAGA訪米団」報告会