平成24年度の「つばさ会/JAAGA訪米団」は、吉田正JAAGA会長を団長として、永岩JAAGA理事長、堀JAAGA副理事長、森下理事の計4名で9月9日から21日までの間、ワシントンDCでの米空軍協会(AFA,Air Force Association)年次総会への参加に併せて太平洋空軍司令部(ハワイ州ホノルル)、教育訓練空軍司令部、第24空軍(以上テキサス州サンアントニオ)、国防総省、日本大使館(以上ワシントン)を訪問し意見交換した。それぞれの訪問先において、日本での勤務経験のある米空軍現役高官やJAAGA名誉会員である歴代第5空軍司令官等との旧交を温めるとともに、多くの現役高官やAFA会長等との活発な意見交換、交流の実施を通じ、日米空軍相互間の信頼の絆を更に深めるとともに、米空軍の現状と将来の動向を把握することができた。
 7月末に太平洋空軍司令官に着任したばかりのカーライル司令官は、第13空軍司令官、空軍司令部の3/5部長等の要職を経ての就任であり、太平洋地域の情勢や我が国の作戦環境、日米の連携要領等に熟知しているとともに親日家でもあり、司令官の計らいで、心のこもった温かなもてなしを受けた。
 司令官を表敬し、懇談。その後場所を移し、太平洋空軍の任務や現況、将来の方向性等について司令官自ら実施するブリーフィングを受けた。意見交換では、西太平洋地域とりわけ日本南西海域の情勢認識、空自と米空軍の連携、米軍戦力の再均衡(リバランス)、Air Sea Battle構想の進捗状況、サイバー戦等について活発な意見交換が行われ、空自と米空軍間は緊密な連携を維持し極めて良好な関係にあり、総隊司令部の横田移転が更なる強化に貢献している。一方、第13空軍は廃止されるが、その所掌任務は太平洋空軍司令官が担うことになり、横田のデタッチメントは第5空軍に吸収されることから、現状と大きな変化はないことを確認した。また、着任早々の連絡幹部谷川2佐と、能勢2佐から、積極的かつ綿密な事前調整や滞在間のきめ細やかなエスコートなど献身的な支援を頂いた。
 12日は、朝5時に宿舎を出発、7時にホノルルを離陸しロスアンジェルス空港経由でサンアントニオ空港には午前1時過ぎ、宿舎に入ったのは2時過ぎで、5時間の時差を考慮してもかなりの強行軍でした。
 翌日の教育・訓練空軍司令部にJAAGA名誉会員であるライス大将を表敬、親しく懇談。その後、約7万人の人員と約80億ドルの予算を擁し、年間約3万4千人のリクルート、新隊員教育(BMT,Basic Military Training)、年間約27万5千人の術科教育、そして飛行教育、空軍大学での教育まで、米空軍のみならず他の軍種や同盟国や友好国の人員を対象に、世界規模で任務を遂行する巨大な教育訓練組織について説明を受けた。空軍の精強性の根幹は教育訓練にあり、教育訓練空軍こそ1stCOMMANDとの認識の下、予算削減の中でも、より効果的・効率的でハイレベルの教育訓練を目指し、部隊指導している様子が伝わってきた。次に、37TRW司令部とDLI/ELCでブリーフィングを受け、それぞれの教育の現状を把握することができた。新入隊者の平均年齢は約20歳で26%が大学経験者、女性は約20%、マイノリティーが約1/3ということであった。また、RQ−4、MQ−1、MQ−9等のRemotely Piloted Aircraft(RPA)のパイロット及びセンサーオペレター等の養成を担当する第558飛行隊を訪問し説明を受けるとともに、シミュレーターを見学・経験した。有人機の操縦経験のないパイロットの養成も含め、極めて効率的に実施されていた。  同じ基地に所在する米空軍のサイバー専門コマンドである第24空軍司令部の訪問は、今回、特にリクエストして実現することができた。サイバーは近年、米空軍が重要視する分野であり、隷下に第67ネットワーク戦団、第688情報作戦団、第689戦闘通信団等を有する、人員約1万7千名規模の部隊である。その任務は国防総省のネットワークの内、空軍部分のサイバー運用を担当し、統合作戦を成功裏に遂行するために資することである。サイバー戦には平時・有事の境目がなく日常的に厳しい凌ぎあいが継続しており、サイバー空間における圧倒的な優勢を確保するために、自動化した、弾力性のあるネットワークの構築等、更なる能力向上を図っている。
 夜は、ライス司令官に、ホワイトハウスと呼ばれている基地内の官舎に招待され、テキサス在住のへスター元司令官も交え楽しく会食・懇談。官舎には家具やこけし等の日本グッズが多数飾られていた。部隊訪問間、ライス大将が終始、同行され、司令官のつばさ会/JAAGAに対する配慮と親日の強さが伝わってきた。
 また、連絡幹部の桑田3佐の調整で、学生がお世話になっているサコご夫妻や入校中の学生等と夕食を共にし、米国の生活、英語に関する苦労話を聞く等、交流・激励の機会を持った。
 ワシントンでは、AFAの年次総会に参加し代表委員長や会長等と懇談し、日米間の今後の交流のあり方等について意見交換した。総会は将官から下士官に至る現役・退役軍人、政府関係者、軍事産業関係者など3日間で約6000人が参加して催された。米空軍参謀長に8月に着任したばかりのマーク・ウェルシュ大将のスピーチで幕を開けた今年の総会では、空軍創設65周年を記念し65のセッションが設けられ幅広いテーマで活発な意見交換が行われていた。また、5万平方フィートの展示場では50を超えるブースに先進搭載装備品やサイバー関連装備品、F−35関連武装等、最新技術が展示されていた。
 国防総省においては、空軍司令部のA2部長のジェームス中将(元5空軍副司令官)、A3/A5部長のフィールズ中将(前5空軍司令官)、統合参謀本部J5副部長のロック少将を訪問し、アジア太平洋地域の最近の軍事情勢等について説明を受け、意見交換を実施した。
 また、日本大使館に藤崎大使を表敬訪問し、忙しい中、温かく迎えて頂き、最近の日米関係に係る意見交換に加え、日本在住経験者で構成された「米軍アルムナイ」の活動の活性化についても意見交換した。
 さらに、訪米団の大きなプログラムの一つがJAAGA名誉会員との交流である。今年はマイヤー元大将ご夫妻、エバハート元大将ご夫妻、へスター元大将ご夫妻、ライト元中将ご夫妻に加え、ライス大将ご夫妻がテキサスから、フレーザー大将(南方軍司令官)がフロリダから参加して頂き、旧交を温めるとともに、情勢変化に関わる情報交換を含め、とても楽しく和やかなひと時を過ごした。特にエバハートご夫妻には、訪米団の受け入れ準備に尽力されるとともに、皆さんを自宅のホームカクテルに招いて頂くなど、一方ならぬお世話になった。
 今回の訪米に係る米軍との綿密な調整とワシントン滞在間の様々な支援に関し、在米大使館防衛駐在官引田将補と斎藤2佐には、多大なご尽力を頂いた。
 今回の訪問を通じ、国家間の信頼関係の醸成には、緊密な人間関係の構築が極めて重要であり、これまで先輩たちが築いてこられた日米空軍間の信頼関係の絆の強さを再認識するとともに、更に新たな相互信頼関係の構築に努力していく必要性を強く感じた。
 終わりに、今次の訪米に際してご協力、ご支援していただいた関係者各位に対し、本紙面をお借りして、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
 (森下理事記)

 

平成24年度「つばさ会・JAAGA訪米団」報告