「つばさ会/JAAGA」を代表し、日米両空軍の更なる友好親善を期した「JAAGA訪米団」は、9月6日から9月17日までの間、遠竹郁夫JAAGA会長を団長として、香川清治理事、堀好成理事、永岩理事計4名で、太平洋軍司令部、太平洋空軍司令部(ハワイ)、米戦略宇宙空軍隷下の第14空軍司令部(バンデンバーグ基地・カリフォルニア)を訪問、その後、ワシントンDCで越智通隆JAAGA副会長が合流、計5名でAFA年次総会に出席するとともに、国防省、空軍省、日本大使館等を訪問し意見交換した。
それぞれの訪問先において、日本での勤務経験のある米空軍現役将校やJAAGA名誉会員である歴代第5空軍司令官等との旧交を温めるとともに、その貴重な財産ゆえの一歩踏み込んだ情報提供を受けつつ活発な意見交換を実施することができ、日米ブルー・ユニフォーム間の信頼の絆を更に高めることができた。また、各研修を通じ、「AIR、SPACE、CYBERSPACE」において絶対優位を目指す米空軍の強い意志を随所に見ることができ、我が国のエア・パワー体制整備のあり方について貴重な示唆を得ることができた。
最初の訪問地ハワイでは、太平洋軍司令部、太平洋空軍司令部及び第13空軍司令部を訪問。それぞれ、戦略計画・政策副部長のフーパー陸軍准将、A3/5部長のジョアス少将、アターバック中将後任のカーライル中将を表敬するとともに双方の関心事項等について意見交換を行った。
フーパー陸軍准将は1989年の天安門事件当時から駐在武官勤務を含め計3回/8年の中国駐在経験を有しており、その経験を生かした今回の補職からも、中国の台頭に対する米軍の関心の高さを窺い知ることができた。
太平洋空軍では司令官のノース大将が不在であったため、第13空軍司令官カーライル中将、A3/5部長のジョアス少将等と情報交換を行った。なお、ノース大将とはワシントンDCのAFA会場で面談することができた。
第13空軍は極東空域を含む西はインドから東は米本土西岸に至る広大な空域において航空作戦を主導する基幹の部隊であり、我が国周辺の空の守りのため或いは平時におけるエア・パワーの有効活用のため今後更に緊密な連携を構築する必要のある部隊である。ここでも「AIR、SPACE、CYBERSPACE」における優位確保と連携の重要性が強調されていた。
ホノルル空港を出発しロスアンジェルス空港に着陸。以降、陸路3時間の行程を経てバンデンバーグ基地に到着した。バンデンバーグ基地では前第5空軍副司令官であったジェームス第14空軍司令官(中将)を表敬訪問するとともに、軍事気象衛星打ち上げ間近のスペース・ランチ・コンプレックス3(SLC3)や第14空軍衛星指揮所(CSpOC)等を視察した。同基地は広大であり、敷地内に同様の衛星発射施設を数箇所保有している。早期警戒、偵察、位置評定、衛星監視等々、宇宙における諸々の活動は米軍の運用にとっては常態ともいえる体制であるが、宇宙基本法により衛星の防衛利用が解禁された我が国としても、限られた予算の中、今後大幅に努力投資していかなければならない分野であり、衛星活動に関わる米軍の体制・動向には引き続き強い関心を持つべきと考える。
ワシントンDCでは、14日、AFA年次総会開会式に出席、ダンAFA会長を表敬訪問した。また、同席で空軍参謀長であるシュワルツ大将とも懇談することが出来た。
AFA年次総会には、現役空軍軍人、シビリアン、政府関係者、退役軍人及び軍事産業関係者等多数が一堂に会し、世界に冠たるエア・パワーこそ、米国の国益と国民の安全を守る基幹戦力であるとして喧々諤々の議論がなされており、米空軍の自負と底力を強く感じた。また会場に隣接する巨大な展示ホールには軍事産業各社の最新技術力を紹介するディスプレイや装備品等の展示があったが、特に今回は無人機等、地上作戦の勝利に直接貢献できる空軍装備品の紹介や、宇宙及びサイバースペース等に関する先進技術の展示が目を引いた。
翌日は国防省アジア・太平洋担当グレグソン国防次官補代理、A5X部長のルー少将、J5キャラハン准将等を訪問し、米国のアジア政策及び米空軍の現状並びに運用構想等を伺うとともにアジア太平洋地域の最近の軍事情勢等の説明を受け、意見交換を行なった。
グレグソン次官補からは、北朝鮮関連については、「戻ることの無い非核化」という目標に向けての同盟関係強化の重要性、中国関連に関しては、警戒心を忘れず「信頼できるステークスホルダー」としてのアプローチの重要性、そして、東アジア太平洋地域安定のため、PKO活動や国際緊急援助も含めた日・米・韓の関係強化の重要性等についてコメントがあった。
ルー少将からは、8月に新設されたグローバル・ストライク・コマンド(GSC)とエア・コンバット・コマンド(ACC)との任務上の棲み分けについて説明があった。基本的にGSCは核兵器の運用に関して責任を持つことになる。核軍縮が議論される中、毅然とした核優位の態勢を今後とも維持すべきとの認識に基づき、今般、GSCが新たに組織改編されている。また、イラク・アフガンの戦闘においては、近接航空支援(CAS)と情報・監視・偵察(ISR)が空軍の主任務となっている旨、紹介があった。今後イラクからは陸軍の撤退が促進されていくが、イラク軍の空軍が未だ体裁を整えていないこともあり、米空軍の撤退は最後になるのではとの見通しが示された。アフガンについては今後有人機、無人機を含め更に積極的な陸軍支援体制がとられることになる。
視察を通じ、次世代の戦いはサイバーウォーの様相を呈するとの懸念が随所で強調されていた。この見通しの元、米軍ではすでに宇宙空軍の下にサイバー専門部隊である第24空軍を新設しており、サイバースペース時代においても優位な態勢を確保すべく諸々の活動を積極的に推進している。
さて、藤崎大使にはかねてより日米空軍相互の交流に深いご理解を頂いているが、今年も公邸に、我々代表団とともに、マイヤーズ大将、エバハート大将、ワスコー中将、ライト中将等歴代の在日米空軍司令官ご夫妻及びジャンパー大将ご夫妻をご招待頂き、貴重な意見交換を実施することが出来た。また、篠田公使と公使公邸で懇談した際、大使ご指導の下、日米ユニフォーム同士の固い絆を礎として、在日米軍経験者を中心とした信頼の草の根ネットワークを構築すべく各種活動を開始した旨、紹介があった。
JAAGA訪米団による視察・交流は、関係者の絶大なるご支援により回を重ねるごとに内容が充実してきており、今回も名誉会員等との交流及び各地における意見交換等多大なる成果を得て無事終了することが出来ました。
最後になりますが、今次の訪米に際してご協力、ご支援していただいた空幕長を初めとする現役の皆様及びワシントンDCの空防衛駐在官尾崎1佐、田崎2佐、そして、ハワイの松下2佐、本郷2佐に対し心より感謝申し上げ、訪米レポートと致します。 (永岩理事記)