今年度の「新生つばさ会/JAAGA」による訪米研修は、遠竹郁夫理事長を団長とし、越智通隆理事、永岩俊道会員、堀好成理事と筆者香川清治の計5名により、9月16日から27日までの日程で実施いたしました。今回の主な訪問先は、太平洋空軍司令部を皮切りに太平洋軍司令部、ネリス空軍基地、国防総省、日本大使館そして米空軍協会(AFA , Air Force Association)年次総会でしたが、その間、多くの米空軍現役高官やJAAGA名誉会員の皆様方等との親密かつ充実した交流の場が得られ、米空軍の現況や今後の趨勢に触れることが出来たとともに、改めて日米相互の友好親善を確認し合うことが出来、大変有意義な訪米となりました。
最初の訪問先であるハワイ州ヒッカム空軍基地の太平洋空軍司令部では、今次訪問に際して絶大なご支援を頂いた司令官のヘスター大将及び13空軍司令官のアターバック中将との再会を喜び合うとともに、新しい太平洋空軍の有り様等について貴重な説明を受けることが出来ました。中でも、13空軍の太平洋地域における作戦・運用上の重要な位置付け、役割に関する説明や、堅固な日米同盟の重要性は不変とする一方で中国、ロシアとの信頼醸成もまた必要との認識が示されたことは、太平洋空軍の大きな変化として特に印象的なものでありました。また、同基地に配備されたC−17部隊の見学に際しては、パイロット2名とロードマスター1名の計3名で任務遂行が可能という同機の高性能振りの説明に加え、太平洋空軍としての作戦・運用機能を十分に発揮するためには高い航空輸送能力の保持が必須要件との説明を受け、一段と向上した太平洋空軍のポテンシャルを感じる機会となりました。続いて訪問した太平洋軍司令部では、歴代米軍三沢基地司令で現HQ USPACOM/J3のアトキンス少将、同/J50のアンジェレラ准将と再会する中、イラク対応の活動振りやSBX(Sea
Based X-band Radar)、THAAD、BMD等に関する大変興味深い説明を受けることが出来ました。ヒッカム空軍基地訪問の間、現太平洋空軍副司令官のライス少将が次期5空軍司令官として予定されているとの紹介があり、今回の我々の訪米が一層意義深いものとなったように思えたものでした。
次の訪問地は、米空軍に所属する者なら一度は赴任することを希望するというネリス空軍基地です。同基地の「USAF Warfare Center」は、米空軍が米陸、海軍及び海兵隊と共に行動することを前提とした戦術・戦法の案出や、指導者・指揮官の教育、4種のフラッグ訓練の実行等を担当する部隊でしたが、正に米空軍の質と方向の決定付けに重要な役割を持つ部隊との印象を強く受けました。また同基地では、今注目のF−22、無人偵察機プレディターやサンダー・バード施設を見学する機会が得られたのに加え、指揮官のウオーデン少将は筆者が統幕3室長であった頃のカウンターパートであるHQ USFJ/J3であったことや、ラスベガス在住のマギー・サールス女史が我々のエスコート役を引き受けて下さったことが、今回のネリス空軍基地訪問を一層楽しく充実したものにしてくれたことを紹介させていただきます。
そして最後はワシントンDCです。国防総省等への訪問に先立ち、歴代在日米軍司令官であられた名誉会員の皆様を迎えての招宴を企画しましたところ、マイヤーズ大将ご夫人、エバハート大将ご夫妻、ホール中将ご夫妻、ワスコー中将ご夫妻そして特別ゲストとして遠竹団長の親しい友人である前米空軍参謀総長ジャンパー大将ご夫妻をお迎えすることが出来、懐かしい思い出話しや近況について大いに語らう楽しい一時を実現することができました。
国防総省においては、世界情勢等に関する情報ブリーフィングに始まり、AF/A2のデプチューラ中将、AF/A8のジョーンズ中将、副AF/A3/5のニュートン少将、SAF/IAのジョディス准将らに表敬・面談する機会を得ましたが、米空軍の現状や趨勢等に関する話題に加え、中国への対応に関わる話題が多く出されたことが印象的でした。また、相手側からF−22の話題が持ち出されることは無かったことも紹介しておくべきことの一つかも知れません。
日本大使館では、日程の都合で加藤良三大使にお会いすることは出来ませんでしたが、防衛駐在官の吉田正紀海将補と面談する機会を得ました。本国の難しい政治情勢の中、制服を着た外交官としての役割を積極的に果たそうとする意欲に溢れた吉田海将補のお話し振りに圧倒されたのは筆者だけではなかった筈です。
退役、現役を含めた会員総数約13万人を有するAFAは、機関雑誌「Air
Force Magazine」 を発刊する全国家的組織であり、今回の年次総会で見られた各種のセレモニーや会場ホテル内に設置された軍事産業界の多数の展示物は、エアー・パワーとしての米空軍の強大さを感じさせるものでありました。折しも同会場では、米空軍参謀総長モーズレー大将が主催されるGACC(Global
Air Chiefs Conference)が同時開催されており、各国の空軍参謀総長等から過去の戦訓、相互運用性、国際協調等に関する興味深い意見発表がなされていました。米空軍は、現在、「世界的なテロとの戦い」、「兵士の生活レベルの質的向上」そして「戦力の能力向上と近代化」を優先施策に掲げながら大規模な組織改革を進行させていますが、正に米空軍の着実な改革振りと地球規模的な存在感を示す一大行事を垣間見た思いでした。
日米交流については、米国内における日米関係の重要性に関する認識低調傾向を助長させないためにも、今後共、OBレベルでの人的交流を大事にするとともに、多彩なレベルでの交流拡大努力が一層望まれるように思われます。また、同盟の確かさの確認責任は同盟国相互にあるのが基本であろうとの認識を新たにしたことも、今回の訪米成果の一つと言えるような気がいたします。
最後に、事前勉強でお世話になった5空軍司令官のライト中将、航空幕僚監部のスタッフの皆さん、そして訪問先でお世話いただいた防衛駐在官、連絡幹部等、今回の訪米に際してご協力頂いた関係者各位対し、本紙面をお借りして心から感謝の意を表したいと思います。本当に有難うございました。
(香川常務理事記)