JAAGA創立20周年記念行事が開催
JAAGA 20th Anniversary on 19 July 2016

 日米エアフォース友好協会(Japan-America Air Force Goodwill Association:以降「JAAGA」という)創立20周年記念行事が平成28年7月19日(火)午後、グランドヒル市ヶ谷において開催され、記念講演会、感謝状贈呈式、記念祝賀会が順次挙行された。

【記念講演会(Commemorative Lecture)】  
 記念行事における最初の次第として、15時30分から約1時間半にわたりJAAGA会員や米軍人等約220名の聴講者が集まり、白樺の間において記念講演会が実施された。講師はJAAGA設立時の在日米軍司令官兼第5空軍司令官であったGen. Ralph E. Eberhart (Ret.)(元アメリカ合衆国空軍大将、JAAGA名誉会員)で、「進化し続ける航空自衛隊と米空軍の関係」と題し、日米エアパワーの過去、現在、未来を語った。
 初めに岩ア茂会長により「来日後の疲れも見せず昨日は炎天下で旧知のJAAGA会員とグリーンミーティングを実施され、その意気軒昂さは日本で司令官として勤務された頃と全く変わらないとお見受けしました。現役時代はF-4、F-16、F-15といった戦闘機に搭乗されるとともに米軍の枢要な指揮官職につかれ、特に9.11の同時多発テロ時には北米航空宇宙防衛軍司令官(USCINCSPACE)としてNORADで指揮をとるとともに、合衆国本土防衛の重要性が再認識され設立された米国北方軍(USNORTHCOM)の初代司令官として軍歴最後の職責を果たされました。今回の記念講演をご快諾いただき大変有り難く感じております」と感謝の意を込めて講師の経歴の紹介があった。
 Gen. Eberhartの講演では、日米両国が独立軍種としての空軍を創り、エアマン同士の友情が育まれるまでの道程を概観し、その共通するバックボーンから見通せる日米エアパワーの役割について展望した。講演の要旨は以下の通りであった。
 『19世紀末に気球が戦場で使用されたことを端緒として、20世紀初頭に航空機が発明され第1次大戦から第2次大戦に向けた過程で、日米軌を一にするごとく其々の陸海軍が航空機の運用レベルを高めていった。不幸にして先の大戦おいて日米のエアパワーは太平洋において激突したが、その戦闘を通じて双方に相手側の技量と能力に対する尊敬と敬意の念が生じる契機ともなった。
 戦後、1947年9月に米国国家安全保障法によりUSAFが生まれ、1954年7月に自衛隊法により空自が設立された。組織としての類似性が高い日米両国の空軍は、訓練・演習を通じSQから軍に至る様々なレベルで連携が図られ、共通の装備品(F-86、F-104、F-4、F-15等)の能力を最大限に発揮しようとする努力の中で密接な関係を深化させていった。空軍として有する共通の「価値観」「利益」「姿勢」と共に、共通のテーマ(「課題」「脅威」「懸念」)を有することとなったのも、直面する厳しい国際環境があったためと言えよう。
 高圧的にミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮。南シナ海や、東シナ海で覇権的行動により航行の自由を阻害する中国。ロシアの潜在的な脅威も近年次第に先鋭化し始めた。北東アジアにおいて、空自とともにUSAFが平和と安定に寄与し、日米両国の良好な関係を育む一翼となれたことに誇りを感ずる。しかし、将来に向けて問題は山積しており、北朝鮮、中国、ロシアの近年における行動に対しやや遅れを取ってしまった。
 その対処すべき中でも、ミサイル防衛は極めて重要であり、指揮統制、情報共有、サイバー対処において更なるステップアップを図らなければならない。この様な共通の課題を乗り越えて行くにあたって、良好な日米関係は何にも増して重要であり、空自とUSAFの連携がその中核となるに違いない。退役してからも、日本での勤務をなつかしく想い出し、日米エアマン間の信頼と友情をこれからも大切にしていきたい。難局を乗り切る努力を続ける日米エアフォースのメンバーに、JAAGAの活動と連携しつつ支援のエールを送っていく所存だ』
 前段の講演の後の質疑応答では、計10名の正会員及び賛助会員からなされた様々な視点からの質問に対し、Gen. Eberhartは丁寧かつ真摯に、これまでの経験に裏打ちされた見識をもって答えていった。主な質疑応答の要点を、ここに紹介する。

Q-1:フィリピンからの撤収は今から考えると急激過ぎたのではないか?現在の中国による南シナ海での覇権的活動の原因を作ってしまったのではないか。
A-1:当時は冷戦終結後の平和の配当、軍事費削減の圧力が高まっていた。直接の撤収理由はピナツボ火山の噴火であったが、短視眼的な撤収で米国のアジア・プレゼンスに悪影響を与えてしまった。戦略的判断において反省すべき点のある事例であった。

Q-2:指揮官の判断と決心について、9.11の経験を踏まえ、所見を伺いたい。
A-2:状況不明の中で生死を分ける判断と決心を迅速に行うことほど難しいことは無い。十分な状況把握に基づく合理的な判断が大切だが、自らの経験則から直観的に合理的判断において見過ごしてしまった重要事項に気付くこともある。しかし、時代の変化は激しく、経験に固執してしまう危険性にも注意を要する。前線のエキスパートの話にも耳を傾ける姿勢が適格な意思決定において非常に重要だ。

Q-3:共和党大会も始まったが、次期大統領が日米安全保障体制の重要性を認めない場合、日米関係はどうなるのか?
A-3:選挙時の大統領候補の発言を額面通り受けとめる必要はない。大統領に就任すると同時に現実にさらされ、国務省・国防総省等からの報告で真実を知ることとなる。レーガン大統領も選挙中はソ連を敵対視した発言をしたが、大統領就任以降、現実を見つめ冷戦を終結させた。日米同盟が如何に重要であるか次期大統領も就任直後に認識するはずだ。

Q-4:日米同盟の重要性を大部分の日本国民は理解しているが、米国市民にとって日本は米国が条約を結ぶ24か国の1国に過ぎない。一般の米国市民にその重要性を理解してもらう方策はないか?
A-4:地図を見れば日米同盟の重要性はすぐ分かる。残念ながら平均的な米国市民は地図も見ない人達が多い。だから、日米関係のみならず彼等はNATOのことも全く知らない。まず、日本で仕事をした経験を有する知日派から、日米同盟の重要性を情報発信し拡大していくことだ。米国内の様々な組織やクラブで日本の重要性を伝え語っていく過程の中で、日本に対する真の理解が進んでいくはずだ。

Q-5:日本国内の米軍基地と基地周辺コミュニティーの良好な関係構築の方策について伺いたい(多摩ヒルズにおいて10年前から周辺コミュニティーの少年少女にゴルフを知る機会を提供し、その多摩キッズに属する少女が世界少年少女ゴルフ大会で優勝したことや、嘉手納基地で行われるスペシャルオリンピックス(地域と基地が協力し実施する障害者参加の運動競技会)が世界中の米軍施設において最大規模となった事等も複数の質問者より紹介された)。
A-5:ご紹介いただいた基地周辺の方々との心温まる交流に敬意を表したい。基地問題において地域住民との相互理解が最も重要だ。基地の存在を受け入れてくれることに感謝し地域に貢献する。地域住民の有する価値観を理解し共に歩む姿勢が究極の方策だろう。

 活発な質疑応答の中で、聴講者の多くが日米同盟の今後について高い関心を有していることが伺えた。最後に会長から講師Gen. Eberhartに対して謝辞とともに記念品が手渡された際には、聴講者全員が起立し惜しみない拍手が送られ記念講演は終了した。

 
                     記念講演


【感謝状贈呈式(Presentation Ceremony)】  
 講演会に続き、17時15分から18時までの間、白樺の間においてJAAGAの各種活動とその発展に貢献した日米双方の関係者及び団体に対する感謝状贈呈式が行われた。
 まず、米空軍側の横田基地第5空軍司令部広報部、嘉手納基地第18航空団司令部広報部、三沢基地第35戦闘航空団司令部広報部、横田基地第374空輸航空団司令部広報部の代表者に対し、順次JAAGAの活動への協力支援に対する感謝状と記念品が贈呈された。
 引き続き、日本側の法人賛助会員である11法人(KYB株式会社、新明和工業株式会社、株式会社ダイセル、東京航空計器株式会社、株式会社東芝、日本航空電子工業株式会社、日本飛行機株式会社、株式会社日立製作所ディフェンスビジネスユニット、富士重工業株式会社、三菱プレシジョン株式会社、横河電機株式会社)に対して、これまでのJAAGAの活動趣旨への理解と協力に関し感謝状と記念品が順次贈呈された。
 岩ア会長からは、「平成8年のJAAGA設立から10年目の第1回、15年目の節目として実施した第2回の各感謝状贈呈に引き続き、今回JAAGA創立20周年を祝し感謝状を贈呈させていただきます。JAAGAの設立目的である航空自衛隊と米空軍との相互理解及び友好親善の増進に寄与する事業を推進し、日米両国の信頼関係の向上に貢献する活動に御支援をいただいた事に謝意を表します。北東アジアの情勢が不透明かつ不確実な中、日米両国の信頼関係を深める事が増々必要であり、航空自衛隊と米空軍の信頼を一層揺るぎないものにしていくことは極めて重要です。今後ともJAAGAの組織目的を御理解いただき、引き続き御協力をお願い致します」との挨拶がなされた。

 
                    感謝状贈呈式


【オープニング ウェルカムドリンク (Opening of Reception Hall)】  
 18時から18時30分までの間、祝賀会場の瑠璃の間に順次、出席者が参集しウェルカムドリンクの懇談の輪が会場各所につくられた。航空中央音楽隊から10名の支援を受け、ピアノ、サックス、ドラム等 6名編成のコンボ・バンド(小編成ジャズバンド)がバンドマスター新井隆弘空曹長リードのもとに、軽快なリズムを響かせた。エアフォース・マーチをアレンジしたジャズのビートが会場全体を心地良い波動で包んだ。
 会場左側の壁面には、これまでの「JAAGAだよりダイジェスト」の映像がスライドショーとして映し出され創刊号に掲載された1996年(平成8年)7月5日の設立総会における大村平初代会長の挨拶や、その1ヶ月前に着任したばかりのLt. Gen. Eberhart第5空軍司令官の祝辞や講演時の写真に、設立から現在に至る20年の歳月が想起された。

【記念祝賀会(Reception)】  
 記念祝賀会は18時30分から約2時間にわたり、約300名の関係者が参集し開催された。
 会場には、防衛大臣中谷元衆議院議員、元防衛副大臣武田良太衆議院議員、中谷真一衆議院議員、元駐米大使藤崎一郎日米協会会長、航空幕僚長杉山良行空将、航空幕僚副長丸茂吉成空将、情報本部長宮川正空将、幹部学校長小野賀三空将、航空開発実験集団司令官荒木文博空将、中部航空方面隊司令官三谷直人空将及び航空幕僚監部をはじめとした航空自衛隊の各部隊等の関係者、米空軍からはゲストスピーカーのGen. Eberhart (Ret.) 名誉会員夫妻、在日米軍司令官兼第5空軍司令官Lt. Gen John L. Dolan夫妻、第5空軍副司令官Brig. Gen. Michael P. Winkler夫妻、第18航空団司令Brig. Gen. Barry R. Cornish及び横田基地関係者、関係団体等からは杉本正彦日米ネービー友好協会(JANAFA)会長、吉田正つばさ会会長等、そして冨田勝也福生・横田交流クラブ副会長、石塚幸右衛門瑞穂町長等多くの来賓の出席を得て、盛大な祝賀会となった。
 開催にあたり、航空中央音楽隊による日米両国の国歌吹奏に続き、岩ア会長から「JAAGAが設立された1996年(平成8年)当時は、冷戦終結の影響を受け日米安保体制の意義を見直そうとする動きもあり、沖縄での不幸な事件も起きて日米関係は難しい問題をかかえていました。その様な状況にあって、本国を離れ日本で勤務する米空軍軍人及びその家族に、感謝の意を伝え、その日本駐留が真に意義あるものであることを実感してもらうためにJAAGAが設立されたと伺っております。この20年を振り返れば、様々な局面で日米双方の諸先輩が、空自と米空軍間における信頼と友好の醸成に尽力してこられました。記念講演の中でGen. Eberhartも日米エアマンの間に生まれた尊敬と敬意についてお話になりました。この日米エアパワーの関係者が共有する想いを大切にしつつ、日米双方の現役諸官が緊密な連携をはかれるよう、此処に集われた皆様とともにJAAGAの活動を進めて参ります」と挨拶がなされた。
 来賓祝辞として中谷防衛大臣からは「20年間にわたるJAAGAの歴史は、まさに新たな時代の変化の中で日米同盟を緊密かつ強固なものとする取組とともに創られてきたと理解しております。2010年(平成22年)にワシントンにおいて在日米軍経験者同窓会(US Military Japan Alumni Association)が設立され、その際、本日のゲストスピカーGen. EberhartやGen.Myers等、日米同盟に関係を持たれた米国の退役将官と宴席をともにさせていただきました。自衛官と米軍人の尽力により日米同盟が強化されてきたことを実感した次第です」とエピソードが語られ、JAAGAの発展が祈念された。
 杉山空幕長からは軽妙なウィットに富む英語での祝辞がなされ会場全体の空気が和む中、総隊司令部が横田に移転してからの4年間において、各種の活動における空自と米空軍の緊密な連携のレベルが飛躍的に高まっていることが紹介された。米空軍を代表してLt. Gen Dolan司令官は「杉山空幕長の話された通り、日米のエアパワーの緊密な連携が各種場面で発揮されていることを実感している。本日は米空軍の若いメンバーも参加しているが、彼等が20年後の40周年記念行事において20年前の想い出を懐かしく語ることが出来る様に、日米空軍間の信頼と友好の関係を深めていきたい」と語った。
 来賓のトリとして、JAAGAの歩んだ20年の歳月に想いを馳せつつ鈴木昭雄第2代会長より「日米同盟に大輪の華を咲かせよう。日米相互の“GOODWILL”に乾杯!」との発声がなされ祝賀会懇親の宴となった。
 今回はJAAGAの20年の道程を期する結節の宴であり、日米相互に関心の深い話題で出席者の話題は尽きないようであった。来賓各位も日米の関係者と親しく懇談し、また旧知の日米関係者の間では思い出話に花が咲くなど、終始和やかな雰囲気と活気に満ちた会話が会場を包んでいた。
 20時30分、森下一副会長より「設立時以降JAAGAの活動に尽力されてきた諸先輩」「厳しい国際環境の中で任務につく日米現役諸官」「JAAGAの活動に理解と協力をいただいている会員等」各位の健勝を祈念して乾杯がなされ祝賀会は締めくくられた。会場出口において岩ア会長夫妻が祝賀会参集者を送りつつ、一人一人に感謝の意が伝えられるとともに、各参集者に日米エアフォース友好の想いを文字と映像で綴った「JAAGA創立20周年記念DVD」が贈られ、創立20周年記念行事は幕を閉じた。
(広報担当理事記)

 
                      記念祝賀会

 

*「JAAGA創立20周年記念DVD

会長挨拶」「祝辞」「記念寄稿」「歴代役員等資料」「機関誌JAAGAだより第49号JAAGA20年の歩みクロノロジー「だよりダイジェストスライドショーの項目を編集し、 年の歩みが文字と映像で記録してあります。なお、本DVD掲載の主な内容は、JAAGAホームページからもご覧になれます。