恒例のJAAGA横田基地研修が10月28日(水)に行われ、石渡幹生氏を団長、藤田雅樹氏を副団長とする総勢31名(正会員8名、法人賛助会員14名、個人賛助会員4名、理事5名)が、秋晴れのもと9時半に福生駅に参集し結団式の後、米軍バスで横田基地に向かった。今回は前日に米国駆逐艦が南沙諸島人工島12マイル内を航行したニュースが報道された直後でもあり、太平洋地域の安定に寄与する日米双方の司令部を訪問出来る事に関心が集まっていた。個別にIDカードの確認がなされ入国審査を受けた如くバスで基地に入れば、車窓に米国の街並みを思わせるPX、映画館、教会が表れた。
 最初に向かった515AMOG(第515航空機動運用群)は、C-5C型機等の外来大型輸送機が駐機するエプロンに面した空輸貨物センターに位置し、太平洋地域最大の空輸拠点機能の具体的姿にふれる事が出来た。4階建て幅50メートル近いパレット組み物資の自動倉庫は、パレット毎のインベントリー、機体搭載の重量計測、搭載用車両への移送を遠隔自動で実施でき、グローバルに展開する米軍を支える空輸ハブとしての役割が横田基地にある事を実感した。若い女性の尉官が「今日は静かな物資集積場だが、4年半前のトモダチ作戦時は膨大な救援物資の搬入搬出が続き、大変緊迫したオペレーションだった。」と語ってくれた。
 次に、第5空軍司令部を訪問し、まず団長等が第5空軍司令官ドーラン中将(Lt.Gen John L.Dolan)を執務室に表敬した。その忌憚の無い語り口から司令官の真摯な人間味が感じられた。若いF16戦闘機搭乗員として三沢基地に4年間勤務し日本との多くの縁を持つことが出来たと語った。その当時、太平洋上でのトラブルにより乗機より脱出する事故に遭遇したことが司令官着任時の報道でも紹介されていたが、その際の救難にあたった海自US-1クルー(3名の現役隊員)と司令官着任後に岩国基地にて再会した写真が本棚の中央に飾られていた。
 コンファレンス・ルームにおける第5空軍の概況説明 と共にドーラン司令官と研修者間で質疑応答がなされたが、日米同盟の重要性をアメリカ国民に理解させる方策についての質問に対し、安倍総理訪米時の上下両院議員に対するスピーチは大変印象深く日米同盟の深化において意義ある内容であったと述べた。また、司令官としての任務を支える重要なメンバーとして、F22の評価試験等を最初に主導した5世代戦闘機に係るベテランパイロットである第5空軍副司令官クラム准将(Brig.Gen David A.Krumm)、及び三沢、横田、嘉手納での勤務を活かし空自との下士官交流プログラムを推進する第5空軍最先任下士官ローレント最上級曹長(CMSAF James A.Laurent)を紹介した。
 昼食会の行われたオフィサーズ・クラブでは、米空軍側はドーラン司令官以下第5空軍司令部の主要幹部、第374空輸航空団副司令リチャードソン大佐(Col.Neil R.Richarson)以下の主要指揮官、空自側は総隊司令官杉山良行空将、同副司令官前原弘昭空将以下司令部の主要幹部、戦術教導団司令佐藤信知空将補、作戦システム運用隊司令兼横田基地司令柏瀬静雄1等空佐等の出席を得て、JAAGA主催の昼食会が開かれた。冒頭、石渡団長より研修団を代表して挨拶のスピーチがなされ「このスピーチを終え本日私に与えられた最も重要な任務を完了出来る。これから、ゆったりした気分でステーキの味を堪能したい。」との言葉に会場全体がなごやかなムードに包まれた。日米双方の司令官から横田基地訪問を歓迎するとともに、JAAGAの諸活動への謝辞が述べられた。同時に、そのスピーチや会食中の懇談において、横田の米空軍と空自の関係が極めて緊密かつ信頼感溢れるものになっている事を感じ取れた。
 午後からは、第374空輸航空団司令兼ねて米空軍横田基地司令デラメター大佐(Col.Douglas C.Delamater)が所要で不在のため同副司令リチャードソン大佐の挨拶及びブリーフィングが実施された。同副司令が米国国防予算縮減の影響を受け、横田基地の運営においても各種の制約が生じているが、様々な創意工夫、改善の機運も高まっているとの言葉が印象に残った。
 バスに乗り込み司令部や航空機駐機地区が集まるウエストサイドから滑走路南端のオーバーラン上を横断しイーストサイドに移動する。案内された米国空軍太平洋音楽隊−アジア(The US Air Force Band of the Pacific-Asia)の演奏場に入ると歓迎のジャズメロディーが鳴り響き軽快なリズムが心を揺さぶった。迷彩服姿で軽妙にクラリネットとフルートを使い分け演奏をリードするバンドマスター!キュートな振付で踊り歌う二人の女性シンガー!極めつけ演奏として「ハナミズキ」の歌が日本語で歌いあげられ、研修団員から大きな拍手が起こった。この太平洋音楽隊はハワイと横田に拠点を置き太平洋〜アジア地域36ヶ国を対象として年200回を超える演奏が行われ、目下、自衛隊音楽祭りに向け練習中との事。演奏対象国の優先順位はどの様な決め方をしているのかという質問に対し、「日本が優先度NO1であることは言うまでもないが、年間の演奏計画は太平洋空軍司令部より示される」との答えに成程と頷く研修者も多かった。
 音楽隊をあとにして基地内バスツアーは北向きに滑走路周りを周回する。随行する中島邦祐理事から「長い滑走路と広大な基地面積という印象を持たれるかもしれないが、横田基地は米軍にとってアジア太平洋地域の空輸ハブ機能を担い、有事ともなれば膨大な軍事物資が立錐の余地が無いほど集積される」との説明があり、研修団員一同あらためて車窓の基地遠景にそのイメージを重ねた。
 1500時に在日米軍及び第5空軍各司令部に相対する空自総隊司令部庁舎に到着、エントランスゾーンにおいて航空総隊のエンブレムを背景に、総隊司令官杉山空将を中心に研修団の記念撮影が行われ、庁舎内を移動後、防衛課長壁島栄一1等空佐から日本の航空防衛力発揮の中枢である航空総隊の任務・機能等について説明を受けた。質疑応答においては、各研修団員の航空総隊の活動に対する関心は高く、予定時間をオーバーしかねない程、密度の濃いものとなった。
 その後、杉山司令官の講話が行われたが「横田基地に総隊司令部が移ってきて以降、日米関係者相互の信頼醸成に係る努力が積み上げられ、日米両司令部間の連携協力は大変円滑に進んでいる。特に、前5空軍司令官アンジェレラ中将(Lt.Gen Salvatore A.Angeiella)の功績は極めて大きく、5回にわたる日本勤務の経験を活かし日米両司令部の良好な関係基盤を構築してくれた。」と述べた。また「本年度のガイドライン及び安保法制の制定を受けて、今後、航空総隊として実施していく課題も多く、鋭意、精強な航空防衛力の維持造成に努めていきたい。」と抱負を語った。
 司令官講話を最後に横田基地研修項目の全てを終了し、庁舎1階で、石渡団長より「本日の研修において日米両司令部の関係が緊密であることに大変意を強くした。JAAGA研修の目的を十分達成したことを関係各位に感謝する。」との解団の辞が述べられた。また、JAAGA事務局側を代表して中島理事より「横田研修に参加したJAAGA会員各位に感謝すると共に、今後ともJAAGAの諸活動に御支援・御協力をお願いしたい。」旨の挨拶がなされた。
 夕やみ迫る基地内道路をバスで福生ゲート出口に向かう途上、独特の重々しいターボプロップの爆音が響きわたる。夜間飛行訓練であろうか。タイトな時間差で北に離陸していく2機のC-130が認められた。その機影を追いながら今日一日の横田基地研修を回想しつつ、基地をあとにした。(杉山理事記)

 

平成27年度JAAGA正会員及び賛助会員の横田基地研修