本年で13回目となる訪米団は、村木JAAGA会長を団長に、山口副理事長、相田氏、そして私の4名という少人数の編成で、9月9日から24日までの16日間の日程で米国各地を訪問しました。
最初、米空軍協会(AFA)の総会に先立ち、コロラド州ピータソン空軍基地に米北方軍(USNORTHCOM)と北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)を訪問しました。JAAGAの名誉会員でもあるエバハート司令官の心温まる大歓迎を受け、充実した3泊4日の滞在でした。
その後、ワシントンに入り、 AFA招待行事に参加、同協会との交流及び同時開催の航空宇宙技術展示会の研修をしました。国防省ではマイヤーズ統参議長をはじめ空軍省の高官と意見交換する機会を得ました。特に忙しいマイヤーズ議長自らスケジュールを調整され、我々の表敬を快く受け入れられたとお聞きしましたが、議長と素直な意見交換が出来たことは本訪問の意義を極めて高いものにしたと思います。渡邊防衛駐在官の言葉によれば、若い米軍人の間で日本勤務希望者が増えているとのことでした。これも近年マイヤーズ議長やエバハート司令官等日本勤務経験者が米軍の中枢を占めていることに由来することでしょうが、真に心強い思いをしました。また加藤駐米大使からは、日本勤務経験のある米軍人の輪を作るため、各種の施策を考えておられることをお伺いすることができました。大変嬉しいことだと思います。
その後この訪問団では初めてですがイリノイ州スコット空軍基地にある米空軍航空機動軍団(AMC)と米輸送軍(USTRANSCOM)の司令部を訪問しました。我々の訪問に合わせ、サウス・カロライナ州チャールストン基地からわざわざC-17型機 を呼び寄せ展示説明をしてくれる等、大変な力の入れようでした。世界規模で運用されている戦略、戦術輸送や空中給油運用システム等、米軍の力の根源の一端を垣間見る思いがしました。また、時間外には本年リーグ優勝した地元カージナルスの野球観戦を奇襲的にセットしてくれるなど、心温まる歓迎でした。お蔭で、田口壮選手との面会、激励のオマケまでつきました。当基地は輸送関係の司令部が存在する基地だけに横田基地勤務経験者も多く、日本ファンで一杯でした。受け入れを直接担当してくれた
AMCの作戦部長のボルチェフ少将も私が入間基地司令当時の横田基地司令で旧交を温めることが出来ました。
スコット基地の次はネバダ州ネリス基地を訪問しました。当基地で部隊運用に入った最新鋭機の F-22型機を見学することが出来ました。この戦闘機がこれまでの戦闘機の延長線上にあるのではなく、まさに革命的に進歩したものであるとの自信に溢れたパイロットの説明に、有人飛行機はどこまで進歩するのものかと感心させられました。イラクでの戦闘に投入されている無人機プレデターも見ることができました。当地の司令官は、三沢基地司令の経験を持つウッド少将で、我々の為にブリーフィングをしてくれました。丁度当基地のエア・フォース・ボールが開催され、我々も招待を受け参加しました。席上主催者のウッド司令官が中将に昇任、空軍省計画局長への栄転が紹介され盛り上がりました。また、当地在住の元在日米軍司令官の秘書であったマギーさんには昨年に引き続き大変お世話になりました。
ネリス基地に引続き宇宙ミサイル・システム・センター(Space & Missile System Center)のあるロスエンジェルス基地を訪問しました。司令官はアーノルド中将で、2年前と同じ方でした。前回にも感じたことでしたが、今回も米国の力の源泉は宇宙にありとの強い印象持ちました。わが国も、宇宙の利用に関し、真剣に考える時期に来ていることを痛感しました。
最後の訪問地は、ハワイでした。へスター太平洋空軍司令官は日本で開催された世界空軍参謀長会議出席のため不在でしたが、ワシントンでのAFAで会うことができました。当地では、副司令官のルノアート中将が対応してくれました。ダイヤモンドヘッドを背景に百万ドルの夜景を見ながら
3時間にも亘る意見交換は大変有意義でした。
2年前訪問し時は、米本土が歴史上初めて攻撃されて間もない時期であり、米国社会全体の落ち着きのない状況を肌で感じましたが、今回は国民一人一人が自信を取り戻し、かっての落ち着きを取り戻しつつあるとの実感を得ました。
2年前、この訪問団に参加しましたが、行く先々で軍の高官からはまず枕詞のようにアフガニスタンでの自衛隊の貢献に対する感謝の言葉がありました。昨年もイラク戦争に対する協力に感謝の言葉があったとのことでした。今回は当初そのような言葉が少なく、不思議に感じていましたが、米軍自体が千人を越す犠牲者を出している状況では、感謝の言葉までの余裕がないのだろうと思っていました。しかし、意見交換が進むにつれ、日本との同盟関係は既にこのような枕詞は必要ないほど強固な段階にまで及んでいるのだということを実感しました。
今回の訪問で改めて米空軍とわが航空自衛隊との永い歴史を痛感するとともに諸先輩の築かれた相互の交流の深さとその恩恵を受ける有難さを身に沁みて感じました。今回の我々の訪問に際しご尽力頂いた方々にこの場をお借りしまして厚くお礼申し上げます。 (越智常務理事記)